地獄の子守唄とは、怪奇漫画家・日野日出志氏による作品である。
家の前を流れる川は工業排水で七色に姿を変え?、周辺は絶え間ない悪臭と工場からの騒音にあふれるという劣悪な環境の中、工業地帯の古びた住宅に一人暮らしで、毎日怪奇漫画を書き続けている、つねに不気味な薄笑いを浮かべた面長の男性がいる。 彼は自らを「日野日出志」と名乗り、子供時代からのグロテスクな絵や動物のホルマリン漬けのコレクションを読者に紹介しながら、幼少時の思い出と、その当時に気付いた自分の特殊能力を身につけた敬意を話し始める。
以下、ネタバレ注意
主人公・日野日出志は病弱で性格も暗く、学校では友達もできず、いつも同級生三人組にいじめられていた。ある日、その三人がむごたらしい最期を遂げるシーンを絵に描いたところ、3人ともその絵のとおりの末路を迎えた。 そうして、自分が殺意を向けた人物が必ずむごたらしく死ぬという能力を開花させた彼は父母や兄、同業者のライバルや自身の原稿をこき下ろした編集長にその殺意を向け、自分のもとに転がり込んだ遺産を元手に漫画を描き続けてきたという。 しかし、この秘密は本来語ってはならないもので、日野日出志は一通り語り終えた後、こちらに指を向け、こう言い放つ―――
「今度は きみが死ぬ番だ! きみは このまんがを見た3日後に 必ず死ぬ!」
「死ね! 死ね! おちろ! おちろ! 地獄の底へおちろ! おちてしまえ!」
この作品が発表された後、日野氏はご母堂にこの作品の存在がバレ、「お前はなんてこと描くんだい!こんなものを描かせるために、お前を満州から連れ帰ったんじゃないよ!」と散々怒られたという(日野氏談) 実際の日野日出志氏は幼少期は活発な子供で、友達も多くおり、いつも放課後は弟も交えて草野球をしていたという。 なお、日野氏はホラー漫画界の重鎮で、描写がなかなかに容赦ないものが多いが、本当はホラー物が苦手で、お酒を飲んで怖さをごまかしながら作品を描いているのだとか。どうもギャグマンガ家を目指していたらしいが、赤塚不二夫?氏の作品を読んで、「オレには無理だ」と断念したらしい。 一応、日野氏のギャグ系の作品として、「狂人時代」「大戦争時代」*1がある。 作品ではないものの、「地獄小僧」には漫画内の電柱の広告に「漫画読むなら日野日出志」とさりげなく宣伝したり、「鬼んぼ」シリーズでは主人公の唱えている呪文が漫画家の本音や自身の作品の宣伝を逆に読んだもの(「イワコリキメシ」→「締め切り怖い」、「シデヒノヒラナムヨガンマ」→「漫画読むなら日野日出志」)だったりと、随所に遊び心がみられる。