タチバナは、わが国固有の柑橘類の一種である。 画像出典:東京都薬用植物園にて筆者撮影 科名:ミカン科ミカン属 学名:Citrus tachibana 原産地:北海道を除く日本全土 生態:常緑小高木 別名:ニッポンタチバナ わが国固有の柑橘類で、樹高は2m~4mになり、枝は緑色で密生し、棘がある。葉は卵型で分厚く、黒みを帯びた緑色である。夏に星形の白い花をつけ、秋から冬にかけて直径3㎝の果実をつけ、緑色から黄色味の強いオレンジ色に熟す。表面はなめらかである。熟しても酸味が強く、また果実が小さく種子の多いことから生食にはされず、果汁を料理の風味づけ、いわば香酸柑橘として利用することもできるが、もっぱらは生け花などの観賞用である。 近縁種のコウライタチバナ(C.nipponkoreana)は樹形はタチバナに似るが、果実の形状はユズのようにやや凹凸があるのが特徴である。山口県や朝鮮半島に自生しており、山口県に自生しているものは絶滅危惧IA類・県の天然記念物に指定されている。園芸店で「タチバナ」として販売されるのはコウライタチバナである。 我が国の最古の記録は、田道間守(たじまもり)が垂仁天皇から常世の国に赴き、「非時香菓(ときじくのかぐのこのみ)」なる妙薬を持ち帰るよう命ぜられ、その「非時香菓(ときじくのかぐのこのみ)」が「是今橘也(これいまのたちばななり)」と解説している記述である*1。その故事にちなみ、京都御所紫宸殿の庭には「右近橘」と「左近桜」が栽植されている。戦国時代には、井伊氏や黒田氏が本種の果実を図案化した家紋を使用していた。 牧野富太郎は明治25年、本種の自生品を高知県佐川町川の内の石灰岩地にて発見し、「ニッポンタチバナ」と命名して本種の詳細を精密な図とともに「植物研究雑誌」に記載した。 現在では、遺伝子を解析したところ、ヒュウガナツやシークワーサーなどの先祖にあたる種であることが明らかになっている。