クズは、有用植物の一種である。
画像出典:いずれも四ツ谷駅近くにて撮影
中国など東アジアが原産の多年生のつる性草本植物で、わが国には奈良時代にはすでに渡来している。和名の葛は、現在の奈良県吉野地方にある国栖(くず)という地域の出身の商人が、クズの根からとった葛粉を売り歩いており、その葛粉の品質が良かったため、「国栖葛(くずかずら)」と名付けられたものが「葛」と短くなったものである。 山野に生え、つるの長さは延べ10mほどにもなり、ほかのものに絡みついて繁茂している。葉は大型の三出複葉。根元は木質化して硬くなり、地下にはイモのような塊根がある。 生命力が強く、前年の塊根やこぼれ種で繁殖し、雑草としてはびこることもある。有用植物として栽培する場合は、定期的に刈り取りを行わねばならない。 秋に赤紫色の蝶型の甘い香りを持つ花を咲かせ、「秋の七草」の一つに数えられている。花の後には大豆に似た豆果をつける。 根からとった葛粉をくずきり*1やくず餅などの菓子にするほか、片栗粉の代用として料理のとろみ付けに用いた。 また、若い蔓の先端は山菜として食用にされたことがある。食用以外にも、クズの根を乾燥させたものを葛根(かっこん)と呼び、鎮痛作用や解熱作用があるため、風邪薬や下痢の時の薬として用いてきた。 つるは強靭な繊維質に富み、発酵させて繊維質を取り出し、布状に編んだものは葛布として、衣服や壁紙に用いられたという。 日本や中国では有用植物として認知されるクズであるが、アメリカ南部では有害な雑草に指定されている。 日本でいうと西南戦争?の前年に、日本からクズの苗が導入されたアメリカ南部では、クズを飼料作物や土壌改良のための植物として利用する動きが見られたが、繁茂力の高さや拡散の速さから、有害植物ならびに侵略的外来種として指定され、駆除が続けられている。日本のように、根を利用するというわけにはいかない。 あちらでは繁殖、並びに成長することに養分を全振りして使うために、掘り出した際には根は細くなり、硬くなってしまっているのだ。そういう場合、積極的な除草活動や野焼き、新芽の刈り取りで成長を食い止め、また花や葉を食材として利用することで、この悪魔的な草に応戦している。