オニドコロとは、野草の一種である。 画像出典:赤塚植物園(板橋区)にて筆者撮影
わが国が原産であるが、中国、朝鮮半島にも分布する蔓性の多年草である。山野によく生息している。ハート形の葉は互生し、長い葉柄がある。 夏に葉腋から長い花茎を出し、黄緑色の花を咲かせる。雌雄異株で、雄花の花序は直立するが、雌花の花序は下向きに垂れる。 根はヤマノイモに似ているが、ジオスチンというサポニンを含み、かなり苦みが強いので、灰汁で煮て苦みを抜いてから食用にしていたという。とはいえ、毒抜きには結構時間がかかり、数回ゆでこぼしただけではえぐみが強くてとても食べられたものではない。また、毒抜き処理を行ったとしても毒成分が完全に消えるわけではないので、現在はヤマノイモとよく似た要注意の毒草とされる。また、生育条件によっては根が曲がりくねった形状になり、それが腰の曲がったお爺さんを連想させるため、「野老(ところ)」の名で観賞用にもされた。また、和名の由来は「ひげ根の多さをお爺さんの鬚に例えた」という説もある。 埼玉県所沢市の「所沢」という地名は、古くは「野老澤」と表記し、「トコロがたくさん生えている沢」という意味であった。当市の市町村章は、本種の葉をあしらったものである。