アダンは、南方に生息する樹木である。 画像出典:小石川植物園にて筆者撮影 科名:タコノキ科タコノキ属 学名:Pandanus odoratissimus 原産地:東南アジア 生態:常緑小高木 奄美大島から沖縄、それに台湾や太平洋諸島に広く分布している常緑小高木で、わが国には江戸時代にはすでに存在が知られている。樹高は3m~6mで、タコの足のような太い気根を出すのが特徴である。雌雄異株。葉は線状披針形で硬い革質、葉の縁と裏面主脈上に棘がある。7月ごろに複数の緑色ないしは黄白色の葉状の総包と白色の肉穂花序からなる花を咲かせ、花の後には集合果をつける。この果実はパイナップルに似た形状で、よく熟したものは食用になるといわれるが、実際は繊維質で、見た目からパイナップルのような味を想像すると肩透かしを食ったような気にさせられる。果実の突起(タコノキと比較して、先端が丸くなっている)の一か所ごとに種子があり、その中心の柔らかく白い部分が食用にできる部分だが、果実一個の大きさに対してとれる量が非常に少ない。果物のように果実を生食するというよりは、この白い部分を用いて「アンダンス―」という嘗め味噌*1を作るのに用いられる。 ハワイでは、本種とよく似た形状の果実をつける近縁種のパンダヌス・テクトリウス(P.tectorius)の果実が「ハラ・フルーツ」の名称で食用にされる。パイナップルに似た味だという。 また、沖縄県ではハレの食べ物として、山菜のように若い芽のアクを抜いてから食用にしていたようだが、かなり手間がかかるため、現在ではあまり利用されなくなっているという。 食用以外の利用法としては、葉を細かく裂いて糸にしたり、葉を細かく裂いたもので筵やゴザ、座布団、篭、草履や帽子を作る。八重山諸島の農民は、この植物の葉を編んで「アンツク」というお弁当入れを作り、中に蒸した芋や石豆腐(現在スーパーで流通する豆腐より水分が少ない)を入れて畑仕事に出たという。現在は防潮林・防風林・砂防林として植えられるほか、観賞用に庭園や植物園などに栽培される。また、大きな果実を生け花の材料として利用することもある。