キク(イエギク)は、観賞用に栽培される園芸植物である。 画像出典:上下いずれも筆者が自宅近くにて撮影 科名:キク科キク属 学名:Chrysanthemum morifolium Ramat. 原産地:中国 生態:多年草 中国原産の多年草で、皇室の象徴や武家の家紋など、物品の意匠に多用されることの多い植物である。ふつうキクというと、キク科キク属の多年草植物の総称で、世界に200種ほどある。わが国には「野菊」と呼ばれる野生の20種の品種がある。草丈は1m前後になり、茎の下部は木質化する。秋に花を咲かせるが、ビニルハウスでの電照栽培により、周年流通する。 本項で解説するキクは、イエギクと呼ばれる改良品種である。わが国には平安時代に中国から朝鮮半島を経由して渡来し、観賞用というよりは薬用として利用されてきた。江戸時代になって交配が進み、観賞用の品種が多く開発された。 花が直径20㎝以上の大きさになる大菊があり、大菊に分類されるものは花弁に厚みのある厚物、花弁が管状になる管物、花弁が幅広くなる広物がある。中菊と呼ばれるものに、仏花などに使用される一般的な実用花や、洋菊(ポットマム)がある。古典的な品種に、嵯峨菊、伊勢菊、美濃菊、肥後菊、江戸菊があり、これらも中菊の一種である。花の直径が3㎝~6㎝もの大きさのものは小菊と呼ばれ、それよりさらに小さい直径1㎝以上3㎝以下のものはスプレー菊と呼ばれる。 画像出典:上下いずれも東京都薬用植物園にて筆者撮影。上はショクヨウギクの「延命菊」という品種で、下はショクヨウギクの「安房宮」という品種である。 観賞用以外にも、品種改良によって苦みが弱まったショクヨウギク(リョウリギク、Chrysanthemum morifolium Ramat. var. sinense Makino forma esculentum Makino.)という品種が江戸時代から栽培されている。花弁の色は黄色や薄い赤紫色など、さまざまである。刺身のツマや、乾燥させた花弁を板状に成型した菊海苔のほかに、酢の物や揚げ物、和え物にする。