厩火事 のバックアップ(No.5)

厩火事とは、落語の演目の一つである。

あらすじ Edit

ある夫婦がいて、ある日、妻が仲人のもとに転がり込んできた。妻は、仲人に泣きついてこのように愚痴をこぼした。
「ほんとにうちの人ったら酷いんです。あたしの髪結い仕事場でちょっと予定してなかったことが起きて帰りが遅くなったのに、『こんな遅くまでどこ遊び歩いてた!』と怒鳴られちゃって…。こっちは油まみれであくせく働いてるのに、昼間っから何もしないぐうたらな亭主にそう言われちゃたまったもんじゃあないでしょう。」
「そうかい、そうかい。本当は私がこういうことは言っちゃあいけないが、もうあんな男とは別れちまいなさい。実は私はあの亭主にもちょっと怒ってるんだよ。お前さんが留守にしている間、私が野暮用でお前さんのうちに行ったら、亭主はよっぽど慌てたと見えて、急いで私を客間に通したんだが、お膳やら徳利やらが床に転がってて、昼間っから酒を飲んでるってわかってからちょっと気に食わなくなっちまって。もう早いとこ別れちまいなさい」
流石に妻もそれほどまでに言われる夫が可哀想になったか、少しかばう様子を見せる。
「そりゃあまりに短気じゃありませんか。少なくとも、ああいう人でもちょっとくらいはいいとこがあるんですから」
「じれったいねえお前さんは。じゃあどうしたいんだい」
「あたしとしては、うちの亭主が本心ではあたしのことをどう思ってるか、知りたいんです。」
「じゃあお前さんに、2つ話を教えてやろうかな。」こう言って、仲人は話を始めた。


まず1つ目は唐土(もろこし)の孔子の話である。孔子は白馬を大切に飼っていたのだが、ある時大火事が起こり、厩が焼けて白馬が死んでしまった。やがて孔子が帰ってくると弟子は皆白馬が死んだことを伝えようとしたが、孔子は「お前たちに怪我はなかったかね?」と尋ね、弟子が皆無事だったと知ると「皆無事ならそれでいい」と安堵する様子を見せたという。
2つ目は、麹町のさる(・・)旦那(仲人いわく、名前は言えないため)の話。この旦那は瀬戸物を集めることが趣味で、ある日知人を家に呼んで瀬戸物自慢を始めた。やがて知人が帰ったので旦那は自分の妻に片付けさせたところ、妻が階段で転んでしまい、瀬戸物を割ってしまった。旦那は妻の様子を心配するわけでもなく、「おい、皿は大丈夫なんだろうな?割れてないと?そんならそれでいい」と皿の無事を確認するとさっさと自分の部屋に引っ込んでしまった。数日後、妻が行方不明になり、使用人とともに家中を探したところ、仲人から「あなたの家は妻が転んでも全然心配しないで、真っ先に瀬戸物の心配をする。そんな薄情な家にうちの娘を嫁がせるわけにはいかない」と書かれた手紙が来たという。
仲人は「お前さんが旦那さんの前で何か旦那の大事にしてるものをうっかり壊してしまったときの旦那の反応を見て、離婚するかどうかを決めなさい」と妻に助言した。


やがて、妻は家に帰ったが、家では夫が待っていた。
「今までどこに行ってたんだ?まあいいや、俺も昨日は悪かったから、こうしてお前と飯食おうと思って、さっきから支度をしといたんだぜ」
「あら、あたしとご飯を食べたいって?まああんた、まるでとうもろこしの幸四郎だねえ」
「何だいそのとうもろこしの幸四郎ってのは?まあいいや、とりあえず座って待っててくれ」
「何言ってるのよ、あたしにも手伝わせてよ」
「いいっていいって。俺がしたくてやってるんだから……っておいおい、そんな高え瀬戸物出すこたないだろ、数日前に洗って大事に取っておいてあるのに」
「…はあ、やっぱり麹町のさる(・・)だ」
「いいから、そこに瀬戸物を置けっての。おいおい気をつけろよ、床が滑りやすくなってるから」
とそこで妻は瀬戸物を落として割ってしまう。
「あーあ、だから言わんこっちゃない。ほんとに割っちまったよ……おい、怪我はねえか?」
「何だって?」
「だから、怪我はねえかってば」
「あ、あんた……」
「急に泣き出してどうしたんだよ。大丈夫だから、もうあっちに行って座ってな」
「ありがとう、あんた。あんたはそんなに、あたしが大事なの?」
「当たりめえだろ。もしお前が怪我でもしちまったら、俺は明日の昼間っから酒呑んで遊べなくなる!

コメント Edit


URL B I U SIZE Black Maroon Green Olive Navy Purple Teal Gray Silver Red Lime Yellow Blue Fuchsia Aqua White

閲覧者数 Edit

現在7
今日1
昨日0
合計499

ホーム リロード   新規 下位ページ作成 コピー 編集 添付 一覧 最終更新 差分 バックアップ 検索   凍結 名前変更     最終更新のRSS