ヒガンバナは、山野草の一種である。 画像出典:東京都薬用植物園にて筆者撮影 科名:ヒガンバナ科ヒガンバナ属 学名:Lycoris radiata 原産地:中国南部 生態:多年草 別名:マンジュシャゲ 中国南部を流れる長江下流域が原産の多年草で、わが国には縄文末期に入ってきている。牧野富太郎は万葉集に登場する花「いちし」を本種ではないかと推測している。秋田・岩手県以南から沖縄まで広く分布する。秋に深紅の火焔のような花を咲かせ、花が終わると線状の束生する葉を出すが、翌年の春には地上部が枯れて、秋に花を咲かせるまでは土中の球根に養分を蓄積している。3倍体のため種子をつけず、球根で殖やす。 球根はかつては救荒作物として田んぼの畔に植えられており、凶作の年には球根を何度も水にさらし、でんぷんを取り出して食用にしたが、全草にリコリンというアルカロイドを含み、毒抜きに失敗すると死亡することもあったという。また、そうした毒性を利用してか、当時土葬が一般的だった時代には、野犬などの動物によって墓を荒らさせるのを防ぐために本種が植えられたという。また、葉をニラと間違えて食してしまう事例も報告されているが、ニラには独特のにおいがあり、ヒガンバナにはないことで区別できる。 近年は属名の「リコリス」の名称で流通し、様々な園芸品種が作出されている。「リコリス」の名義で流通する品種には、花の色がオレンジ色ないしはピンク色のものが流通する。白い花のものはシロバナマンジュシャゲ?という同属の別種である。また、黄色い花を咲かせるものも、ショウキズイセンという同属の別種である。こちらは花の形状はヒガンバナの色違いを思わせるが、花の後に種子をつけるという点で区別する。かつてこの種は「ショウキラン」名義でも呼ばれていたが、同名のラン科の腐生植物と誤解されやすいので、本サイトではショウキズイセン名義で紹介するものとする。