ナスは、食用として栽培される植物の一種である。 画像出典:有用植物図説(東京大学総合図書館所蔵)
インドが原産であると古くから言われているが、原種がいまだ発見されていない。 我が国は中国を経由して日本に伝わり、奈良時代の「正倉院文書」にすでに記述が見られるという。 色名の茄子紺や「一富士二鷹三茄子」「瓜の蔓に茄子はならぬ」「親の意見と茄子の花は千に一つも仇はない」などの俚諺に見られるように、日本人の生活とナスは密接に結びついているのである。 夏~秋に小さな淡い紫色の花を咲かせ、下向きに実る果実を収穫し、煮付け、漬け物、焼くなどして賞味する。原産地では多年草となるが、我が国では冬に枯死するため、一年草のあつかいである。 地方ごとに様々な品種があり、果皮の色はふつう黒紫色だが、南方には紫色の色素・ナスニンをほとんどあるいは全く含まない黄緑色や白色の品種がある。
果実が完全な球体の品種。新潟県の長岡巾着や京都の大芹川(賀茂)が有名である。煮物や漬物に向くが、特に田楽にされることが多い。
果実が長くなる品種。現在市場で売られているナスは長卵形ナスという品種で、千両なすの系統が多く栽培される。ここで取り上げるナガナスは20cm近くの長さに達することがあるほど、細長い品種である。福岡県の博多長なすがこの代表である。焼く、煮付ける、漬け物など調理の範囲が広い。
果肉にナスニンを含まないため、果皮色が白っぽいのが特徴。この特徴は鹿児島の薩摩白長や薩摩白丸に見られる。特に、果皮がウリのように緑色をしたものはアオナスの名で呼ばれるが、こちらもシロナスの名称で呼ばれることがある。主に煮て食べる。
果実が鶏卵ほどの大きさの品種で、はじめは白色だが、熟すと黄色になる。このため、古くは金銀ナスビの名称で流通していた。現在は同名の雑草と混同するのを避けるため、タマゴナスあるいは観賞用ナスの名前で流通する。背丈も低いので、鉢植えで栽培する頃ができる。果肉は種が多く、硬いため食用にできない。