芋粥(芥川龍之介の小説) のバックアップ(No.4)

芋粥は、芥川龍之介による作品である。1916年9月に雑誌『新小説』で発表された。『宇治拾遺物語』巻26第17話に収録されている「利仁の将軍若き時京より敦賀に五位を()て行きたる(こと)」を下敷きとした作品である。

登場人物 Edit

  • 五位
    摂政・藤原基経に仕える侍(従者)。本名は設定されていない。お世辞にも色男とは言えない見た目のため、同僚たちにバカにされる日々を送っている。
  • 藤原利仁(としひと)
    摂政・藤原基経に仕える役人。権力者。五位のボヤきを聞きつけ、敦賀(福井県)にある自邸に五位を連れて行き、芋粥をご馳走しようとする。

ストーリー Edit

時は平安の元慶の末から仁和のころ、摂政の藤原基経に仕える某という五位に属する侍がいた。彼は鼻が大きくて赤いので、お世辞にも色男とは言えず、おまけに出世もできないため、同僚や上役からは冷淡な態度をとられ、特に同僚からは明らかにひどいいじめを受けながらも、「いけぬのう、お身たちは。」と優しくたしなめることしかできなかった。また、子供たちが犬をいじめているのを目撃した時も優しく注意したが、やはり自身の風貌を侮辱され、そのうえ食って掛かられる始末であった。
こうして、周囲の人たちから軽んじられてきた五位だが、芋粥(山芋を適当な大きさに切って、蔦の樹液・味煎で煮たデザート)に対して激しい執着心を持っていた。
ある年の正月、基経のもとに臨時の来客があった。饗応が開かれ、侍たちはその残飯を食べることが許されており、そこで五位は芋粥にありつくことができた。ごくわずかではあったものの、それでもおいしく感じたのだった。芋粥を飲み終わってから、五位は
「何時になったら、これに飽ける事かのう。」とポツリとボヤいたところ、たまたま臨席していた役人・藤原利仁が「お望みなら御供が飽かせましょう」と小ばかにした様子で声をかけた。五位は欲望に負けて、小ばかにされていることにも気づかずその申し出をありがたく受け入れた。その様子を見ていた周囲の侍たちの誹謗も、自身のかねてよりの希望が叶うことに比べれば、五位にとってはどうでもよくなったのだ。


それから数日後、利仁と五位の2人は馬に揺られて敦賀にある利仁の館に向かった。道中で利仁は狐に「客人を連れて行くので迎えに来るように。」と命令し、五位は、狐でさえも従わせる利仁の権力に尊敬の念を抱く。そうして、五位は利仁の館で一夜を過ごした。翌朝6時半ごろ、五位が目を覚ますと、朝食として、1斗(18リットル)もの大量の芋粥が大鍋に用意されているのを見た。大量の芋粥を目にした今、五位は食欲が失せかけていることに気が付いた。願望が叶ってしまうことに対して、葛藤すら抱いていた。1時間後、五位は利仁やその舅の有仁とともに朝食の席に着く。もう食欲は失せていたが、利仁たちは芋粥を勧めてきた。五位は最初の一杯はどうにか飲みほした。更に勧められ、利仁たちの貌に意地悪な笑みが浮かんでいることにも気づかず、好意を無碍にしてはならじと、もう一杯飲み干した。さらに3敗目を勧めてきた有人に対し、五位は辞退の意を示した。そうして、昨日の利仁の使者の狐が仲間を引き連れて戻ってきたため、利仁らは彼らにも芋粥を飲ませた。
この光景を見て、五位は「もうこれ以上芋粥を飲まなくて済む」という安心感を抱いたのだった。

教訓 Edit

人間はだれでも、欲望の一つや二つは持ち合わせている。五位の場合、ささやかながらも「芋粥を満足するまで飲みたい」という欲望を持っていた。しかし、欲望というものは満たされた時が一番価値のあるものだと考えがちだが、実際はそうではない。それが達成された瞬間から、その欲望に幻滅し、自身の中で価値が色あせていくのだ。欲望を抱くことは、それによって有意義な人生を送るために必要ではあるのだが、実際は、達成されることでその欲望が失われてしまう恐怖や葛藤と常に隣りあわせなのである。

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