ボタン(牡丹)は、園芸植物の一種である。
画像出典:東京都薬用植物園にて筆者撮影 科名:ボタン科ボタン属 学名:Paeonia suffruticosa 原産地:中国北西部 生態:落葉低木 中国北西部が原産の落葉低木で、わが国には天平時代に渡来したとも、平安時代初期に唐から日本に帰ってきた空海が持ち込んだとも伝わっている。江戸時代には園芸品種として親しまれており、花卉や果樹などの園芸植物の管理方法を扱ったテキスト「花壇地錦抄」にも記載されている。多くの園芸品種があり、樹高が50cmから180cmと幅が広い。樹皮は黒褐色で、表面はごつごつしている。 普通4月から5月にかけて花を咲かせるが、早春に花を咲かせる「寒牡丹」という品種もある。花の咲き方は一重咲きや八重咲があり、花の色も濃い赤色やマゼンタピンク、白に近いピンク色や純白などと多彩である。 漢方では根の皮を「牡丹皮(ボタンピ)」と呼び、鎮痛、消炎、浄血に利用する。 漢名の「牡丹」は、明代に刊行された生物百科事典「本草項目」によれば「牡丹ハ色丹(あか)*1ナルヲ以テ上ト為ス 子ヲ結ブト雖(いえど)モ根上ニ苗ヲ生ズ 故ニ是ヲ牡(おす)ト云フ」とある。 この文が描かれた当時から、牡丹は赤色の品種が最上品であるとされていた。しかし、その木から種子を取って育てた子どもの木は必ずしも同じ花を咲かせるわけではないので、翌年も確実に赤い花を見たい場合は株分けによって増やさなければならない。 それを子ができぬオスになぞらえて、「牡丹」という字を当てたのである。 1929年にウメに変更されるまでは、ボタンは中国の国花であった。なお、よく似た植物にシャクヤクがあり、両者は見た目では区別しにくい。本種は樹木で冬でも地上部が残るが、シャクヤクは多年草であるため、冬には地上部が枯れてしまうという点で区別する。 現在、園芸植物として人気のあるボタンであるが、栽培には少しコツが要る。まず、苗木を植える時期は10月でなければならない。というのも、園芸用の樹木の中では根が動き出すのが早く、たいていの庭木の植え付けに最適な落葉する時期を待っていると、根が徒長して鉢から出てしまい、根が傷んで弱ってしまうためである。 園芸店で売られているボタンの根巻きの苗は、通常シャクヤクの台木に接ぎ木してある苗である。シャクヤクは草本植物であるのだが、不完全ながらも形成層を持っているという。とはいえ、植え付けから2年以上たつとシャクヤクの台木としての効果が弱まってくるため、接目より上に土を盛り、更に接目を針金でしばるとボタン自身の根が早く出てくる。