【菊座郡】
果実の形状は扁球形で、果実の表面にコブがほとんどない品種で、縦溝が鮮明な品種群。品種によってはかすり模様のような斑紋を生じることがある。果皮色が黒みの強い緑色になる「黒皮」「印食」「富津黒皮」「日向14号」、果皮色がベージュ色の「白皮砂糖」、緑地に黄色い斑紋が入る「会津小菊」、果実が大型になる「三毛門」、蔓があまり伸びず、節間が短くなる「鴻池蔓無」などがある。フランスで栽培される「マスキード・プロヴァンス(Musquee de Provance)」という品種は本種とよく似た形状で、しかもかなり巨大な果実をつける(概して土鍋くらいの大きさ)。果実が極端に大きくなる品種は味が薄いことが多いが、この「マスキード・プロヴァンス」の風味は非常に優れている。なお、前述のようにかなりの大きさになるので、現地では調理しやすい大きさに切り分けて売られることが多い。 【縮緬郡】
果実の形状は扁球形で、果実の表面に細かなコブを生じ、縦溝がほとんどはっきりしていない品種である。代表的な品種に、「干潟」「愛知縮緬」「居留木橋」「備前黒皮」「見附」「田尻」など。食感はややもっちりとしており、やさしい甘味がある。 【トウナス郡】
果実の形状は瓢箪型で、果実の表面に細かなコブを生じるものやコブを生じずに縦溝が鮮明に走るもの、その中間的な性質のものがある。斑紋は普通ないが、生育条件によってはうっすら模様が出ることがある。また、生理現象によるもので、果実の形状が完全なひょうたん型にはならず、首の部分はまっすぐであるが下が膨れた「フラスコ型」や、くびれが不明瞭なしずく型になることもある。代表的な品種は、「鹿ケ谷」。 【鶴首郡】
果実の形状はトウナス郡とよく似ているが、果形はヘチマに似ることもあり、果実の表面はつるりとしていて、特有の斑紋がある。おそらくは中国で発展し、日本に導入された品種群であろう。福岡県や愛知県で栽培されてきた。代表的な品種に、「鶴首」「江南長」「九条」*9が知られる。果実の色は最初は黒に近い緑色だが、熟すと黄色に近い褐色になる。短日性の品種で、九月以降に花を咲かせ始め、10月から11月にかけて果実をつける。右写真のように、果実にかすり模様が入ることがあるが、この模様の濃淡は特に味には影響しない。ベージュ色の果皮をもつアメリカの品種「バターナッツ」や沖縄の「島カボチャ」も本種とよく似ている。また、イタリアで栽培される「トロンボンチーノ」という品種は首の部分が細長く、ふくらみがより丸みを帯びる。こちらは若い果実をズッキーニのように利用することが多いが、熟した果実も焼いて食することがある。西洋カボチャほどではないものの、そこそこ強い甘味があるという。
(左上)バターナッツ。風味は非常に良いのだが、水分が多すぎて煮物には向かない(べチャッとした食感になる)。よって、グリルやポタージュなどに向く。見た目が面白いので、観賞用にされることもある。自宅にて筆者撮影。果実はそれほど大きくないので家庭菜園に向く。(右上)「小菊」。自宅にて筆者撮影。菊座型で、果実が手のひらサイズと小さいのと、形状がよく似た「黒皮南瓜」と比較して凸凹していないのが特徴。煮物にしてもよいが、中身をくりぬいて食材を詰め、蒸してもよい。ネットに這わせるため、果皮がきれいな黒緑色に色づく(写真のものは熟しているため粉を吹いている)。(中左)会津小菊。福島県会津若松市にて筆者撮影。全体的に丸みを帯びた形状で、果皮表面には深緑色地に黄色いかすり模様が入る。(中右)トロンボンチーノ。イタリアにて古くから栽培されてきた品種。若い果実をズッキーニとして食するが、熟したものも「カボチャ」として食べることができる。自宅にて筆者撮影。(左下)黒皮ちりめん。自宅にて筆者撮影。表皮は黒緑色で、溝の判別はややつきがたく、表面が細かいコブでおおわれてぼこぼこしている。写真のものは熊本県産の「木原南瓜」と呼ばれるものであるが、千葉県で栽培される「富津黒皮」や岡山県で栽培される「備前黒皮」はこの見た目に近い。(右下)マスキード・プロヴァンス(Musquee de Provance)。フランスで古くから栽培されている品種で、巨大な果実をつける。大きな見た目に反して味は繊細で、安納芋に似た風味がある。写真は観賞用として自宅近くの園芸店に展示されていたものを撮影した。