キツネノカミソリ(狐の剃刀)とは、山野草の一種かつ有毒植物の一種である。
画像出典:牧野記念庭園にて筆者撮影。(左)キツネノカミソリ。(右)オオキツネノカミソリ 科名:ヒガンバナ科ヒガンバナ属 学名:Lycoris sanguinea 原産地 本州~九州、中国 生態:多年草 我が国在来の多年草であるが、中国や朝鮮半島にも生息例がみられ、これは中国や朝鮮半島に球根が何らかの形で持ち込まれたためと推測される。 明るい林床や林縁などに自生するほか、花を観賞用にするため庭に栽培されることもある。早春に、ヒガンバナ科特有の細い線形の緑色の葉を出す。花を咲かせるころには、一時的に葉は枯れて消滅するが、上写真のように葉が残っていることも珍しくない。 8月半ば以降から秋にかけて花茎を30〜50cmほど伸ばし、先端で枝分かれした先に5つほどの花を咲かせる。花は鮮やかな橙色で、6枚の花弁からなる。 ヒガンバナ科の植物の中では花を咲かせる時期が最も早く、また花の色も美しいため観賞用にされることが増えているが、本種は有毒植物としても知られている。全草にリコリンという有毒物質を含むので、摂取すると嘔吐を引き起こし、摂取量が多いほど死亡リスクが高まる。特に、本種の花のつぼみを、ノカンゾウやアキノワスレグサなどのつぼみが食用になる山菜と間違えて食し中毒した例が知られている。 近縁種のオオキツネノカミソリ(var.kiusiana)は植物体全体の特徴は本種によく似ているので紛らわしいが、花が大きく花弁が9cm程になる点と、茎の枝分かれした先に着ける花の数が4個である点、長く突き出したようなおしべを持つ点で区別する。変種名にみられるように、九州地方に多く生息するが、関東地方にも生息例がある。