キクイモとは、有用植物の一種である。 画像出典:東京都薬用植物園にて筆者撮影 科名:キク科ヒマワリ属 学名:Helianthus tuberosus L. 原産地:北米 生態:多年草 北米が原産の多年草で、わが国には江戸時代末期に飼料用作物として渡来したといわれるのだが、来歴には諸説がある。たとえば農学者の津田仙(女子教育者・津田梅子の父親)は、「1861年に渡来した」と明治9年に記録している他、「イギリス全権公使・オールコックが逗留先の高輪東禅寺の庭で手持ち無沙汰を解消するために非常食として持参していた芋を植えて育て、収穫した芋を自ら調理してときの老中・安藤対馬守信正にふるまった」とも記録している。また1863年に、横浜に入港したアメリカ船の船員がキクイモを棄てたものが発芽し、これが日本における栽培の始まりとする説も存在する。北海道では飼料用の作物として大規模な栽培がおこなわれ、特に戦中戦後には非常食としても多く栽培された。現在は各地に雑草として帰化しており、特に北海道での野生品の発見例が多いのはこうした事情によるものである。家庭菜園でも栽培されるほか、農産物直売所でも見かけるようになっている。 地下にある巨大な塊茎から春に芽を出し、草丈1mから3mほどの大きさにまで成長する。茎は直立し、しばしば枝分かれする。茎と葉には硬い毛が密に生えてざらざらしている。葉は先のとがった卵状の長楕円形で、長さ20~30cmと細長くなり、茎の下部の葉は対生し、茎の上部の葉は互生する。秋になると、小さなヒマワリのような黄色い頭状花が上部の枝先にひとつずつ咲く。この花は短日花で、朝に開き、夕方にはしぼむ。 秋に地上部が黄色くなって枯れ始めたころに塊茎を掘り出して食用にする。塊茎の色合いは白褐色と紫色の2種がある。塊茎にはデンプンは含まれないが、イヌリンが含まれるため、果糖やアルコールの原料にされるほか、ジャガイモとゴボウに似た風味を持ち。煮物や漬物などにする。また、春に芽生えた若い苗も青菜として食用にすることができる。 英名はJerusalem artichokeというが、イスラエルの都市のエルサレムとは一切関係がない。これはおそらく古いイタリア語で Girasole Articiocco(ヒマワリのようなアーティチョーク)と呼んでいたものが崩れて「エルサレム」と発音されるようになったためであるという。