マクワウリとは、果実を食用とする植物の一種である。 画像出典:自宅近くの料亭にて撮影
インドが原産地であると言われる、つる性の一年草。我が国には縄文末期~弥生時代に渡来し、夏に喉の乾きを癒やすための果物として栽培されていた。縄文時代晩期の遺跡(唐古・鍵遺跡)から種子が発見されている。 万葉集にも詠まれ、古くは「瓜」といえば本種かシロウリを指した。大量生産が容易なので、市場では普段使いの果物として安価に取り引きされていた。美濃国真桑村(現在の岐阜県本巣市)が一大産地だったため、マクワウリの名称で呼ばれる。風味の良さから「これは真のウリだ!」とたたえて「真瓜(まか)」と呼んでいたものが訛ったという説もある。また、古くは中国経由で渡来しているため唐瓜(からうり)の名称で呼ばれたこともある。 戦国時代、特に織田信長を題材にした作品では信長がマクワウリを旨そうにかぶりつくシーンが描かれることがあるが、これは信長が公卿・山科家や朝廷にマクワウリを献上したという逸話が根底にあるものとされる。 明治時代になって欧米諸国から西洋種のメロンが導入されたが、当時は日本のような環境では栽培に向かない品種も多く(のちに大隈重信が自邸で温室を作り、ネットメロンの栽培に成功)、一般家庭は手の出せる代物ではなかったため、しばらくはマクワウリの栽培が続けられた。 昭和も戦後に入り、「プリンスメロン」などのマクワウリと西洋のメロンの安価な交配種が次々と作出されたことや、西洋種のメロンの栽培のコストの低下など様々な事象が重なって、マクワウリ自体の栽培は少なくなっているが、現在も夏場の農産物直売所や百貨店にて購入することができる。また、通販で種子や苗を購入して自宅で栽培することもできる。西洋種のメロンとは異なり、病気に強いので育てやすい。 果実は熟すると蔕から離れたり、収穫した果実から蔕がポロリと取れることがある。ここから、臍落(ほぞお)ちが訛ってホゾチとも呼ばれる。 瓜食(は)めば子供思ほゆ 栗食めばまして偲(しぬ)はゆ いづくより来たりしものそ 目交(まなかい)にもとなかかりて安眠(やすい)しなさぬ 銀(しろかね)も 金(くがね)も玉も 何せむに 優(まさ)れる宝 子にしかめやも(山上憶良『万葉集』巻5 802)