カボチャ のバックアップ(No.26)

カボチャ(南瓜、倭瓜、北瓜)は、我が国で栽培される野菜の一種である。

科名ウリ科カボチャ属
学名Cucurbita.sp
原産地アメリカ大陸
生態つる性一年草
英名pumpkin,squash,marrow,gourd
別名トウナス、ナンキン、ボウブラ

生態 Edit

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画像出典:ニホンカボチャの花と果実。いずれも東京都薬用植物園にて筆者撮影。画像の品種はいずれも「鹿ケ谷」(西京)。
 蔓性の1年草で、蔓を4メートルほどまで伸ばして、大きなハート形もしくは切れ込みの浅い掌型の葉の下に直径5cmほどの黄色い花を咲かせた後に、食用ないしは観賞用となる果実を実らせる。
果実の形状は変化に富む。完熟した果実はウリ科の植物の中でも保存がきき、丸のままであれば冬まで保存することが可能である。夏の盛りに収穫されるが、うまみを乗らせるためにキュアリング*1をする必要があり、本来の旬は晩夏・秋から冬である。冬至にカボチャを食べる習慣は江戸時代からあり、別名の「ナンキン」から、「運」の付くものとして縁起かつぎのため食された。ただし、冬至を過ぎたカボチャは傷んで柔らかくなり、味も落ちるため、「冬至カボチャに年を取らせるな」「冬至カボチャを冬至が過ぎてから食べると病気になる」「冬至カボチャを冬至が終わってから食べると頭が悪くなる」という言い伝えがある。
また、ウリ科の作物の中でも病害虫に強いので、初心者に育てやすい野菜でもある。腐った果実を畑へ放り込んでおけば翌春にはそこから芽を出して蔓が繁茂するほど生命力が強くかつ強健なので、その強健な性質を生かして、キュウリスイカなど病害虫の被害を受けやすいウリ科の野菜の苗木に用いられる。

品種 Edit

我が国では、青果用としてセイヨウカボチャ(クリカボチャ)、二ホンカボチャ、ペポカボチャが栽培され、市場に流通する。また、セイヨウカボチャとニホンカボチャの種間雑種や、クロダネカボチャがスイカやキュウリなどの苗の台木に用いられ、果実が市場流通することは、前者は「鉄かぶと」という品種*2がまれにあるものの、後者はほとんどない。また、北アメリカの先住民が栽培してきたミクスタカボチャという巨大な果実をつける品種群は、わが国での流通は全くと言っていいほどない。
セイヨウカボチャとニホンカボチャの種間雑種に、更にセイヨウカボチャを交配させた品種がある。それは「万次郎カボチャ」と呼ばれるものである。この品種はラグビーボール型の果実をつけ、果肉はニホンカボチャのしっとり感とセイヨウカボチャの甘さのいいとこどりのような風味である。しかも果実は長期保存が可能で、夏~秋に収穫すれば翌年の早春まで保存することが可能である。また、性質がかなり強健で病害虫に強く、耕作放棄地のような荒れた土地でもつるを茂らせ、また放任栽培でも大量の果実を実らせるという、かなりの優れものである。ただし、花粉が出にくいという特徴があるので、栽培する場合は花粉用としての別の品種の苗を植える必要がある(通販サイトで購入する際には、必ず授粉用のカボチャの苗がセットになっている)。
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万次郎カボチャ。池袋の百貨店で筆者撮影。


この他に、種間雑種カボチャの一種に「プッチィーニ」がある。これは、セイヨウカボチャとペポカボチャの種間雑種で、果実はよくあるカボチャ型で、表面はクリーム色でオレンジ色の縦縞が入る。しっかりとした甘みがあるので、レンジで加熱しただけでも十分美味しく食べることができる。大きさを生かして、中身をくりぬいてから食材を詰め、グラタンにしても見た目もよく味もよい。また、見た目がかわいらしいのでハロウィンカボチャとしても用いることができ、花屋でもハロウィンのシーズンに入ると「ハロウィンカボチャ」名義で売られている。ただし、食用の品種でも花屋で売られている場合は、もともと花卉として栽培されているもので、野菜と花きでは使用できる農薬の基準値が異なるから、あまり食さないほうがよい。
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プッチィーニ。自宅にて撮影。


セイヨウカボチャと二ホンカボチャ、ペポカボチャは見た目の変異が大きいので果実の形状からの区別は困難だが、果梗の形状や質感の違いから区別することができる。


セイヨウカボチャ→円柱形、コルク状。果実との接合部は広がらない。細かいとげがある。
二ホンカボチャ→五角形ないしは六角形、木質化。果実との接合部が広がり「座」を作る。
ペポカボチャ→五角形ないしは六角形、木質化果実との接合部は広がらない。品種によっては細かいとげがある。

セイヨウカボチャ(Cucurbita maxima) Edit

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画像出典:花の写真は自宅近くの畑にて、果実(右上:黒皮栗、左下:「打木赤皮甘栗」)は自宅にて撮影。「白皮栗」の写真は池袋の百貨店にて撮影
我が国には明治直前に渡来し、北海道で多く栽培されていた。当初はHubbardやDelicias(日本名はカステラカボチャ)などの果実が大きくなるものが多く栽培されており、とくに、Hubbardの系統は果皮が非常に硬いため「マサカリカボチャ」「ナタワリカボチャ」の名称で栽培されていた。
果実は普通扁球型で表面はなめらか、黒皮や青皮、赤皮や白皮がある。
果梗がコルク状になるのが特徴。葉は先の尖らない心臓形で、全体的に細かい毛が生える。種子はぷっくりとした厚みがある。
果肉は濃い黄色でほくほくとした食感をもち、甘みが強いことから、クリカボチャとも呼ばれ、人気の高い野菜となっている。スープや煮物、グリル、茹でてつぶしてからサラダやコロッケ、またケーキやパイなどのお菓子にもにする。
主な品種に「えびす」(黒皮)、「みやこ」(黒皮)、「打木赤皮甘栗」(赤皮。加賀の伝統野菜)、「紅爵」(赤皮)、「雪化粧」(白皮)、「白爵」(白皮)、「芳香青皮栗(東京カボチャ)」(青皮)がある。
近年は核家族世帯の増加にともない、大型の野菜が敬遠されつつあるが、その中で開発されたのがミニカボチャなどの「ミニ野菜」と呼ばれるものである。とくに「坊ちゃん」*3「ほっこり姫」*4「栗っプチ(旧名:栗坊)」*5『すずなりカボちゃん』*6などは家庭菜園で人気を誇っている。このミニカボチャの中でもかなりの変わりものに、「コリンキー」という品種がある。これは、「打木赤皮甘栗」とオーストラリアの品種を交配して作られた一代交配品種で、未熟な黄色いタマネギ型の果実をサラダや漬物などにして食用にする品種である。熟して果皮の赤みが強くなったものは焼いて食することができる。未熟果を食用にする品種はほかに、「鈴かぼちゃ」と呼ばれるものがある。これは、「坊ちゃん」(後述)より少し大きい果実をつける品種で、果肉は薄い黄色である。サラダ専用かぼちゃともいうべき品種で、サラダはもちろん、浅漬けや酢漬けに向く。炒め物などには向かない。
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画像出典:ミニカボチャの集合写真。筆者撮影。黒緑色(左)、赤橙色(右)、灰色(右上)の品種はそれぞれ「坊ちゃん」「赤い坊ちゃん」「白い坊ちゃん」。筆者が農産物直売所にて購入
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芳香青皮栗南瓜。自宅にて筆者撮影。「東京南瓜」とも呼ばれ、戦前に東京都立川市で栽培されていたことからこの名がある。現在のセイヨウカボチャに比べ、やや粘質である。果皮は灰緑色で、果実の大きさはやや小ぶり。
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画像出典:コリンキー。自宅にて撮影
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画像出典:神代植物公園にて筆者撮影。ナタワリカボチャ(Hubbard)。果実の形状はラグビーボール型で、鉈や鋸でないと割ることができないほど果皮がカチカチに硬いのだが、これにより収穫してから翌年の春まで腐らないという保存のよさがウリであった。ただ、1個につき10kgほどの大きさになることが多いので、家庭用での栽培がほとんどとなっている。これは白皮の品種。


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画像出典:筆者が東武百貨店(池袋)にて撮影
秋になると、巨大なカボチャの重さを競うコンテストが開催される。このコンテストに使われるカボチャは「アトランティック・ジャイアント」という品種で、これもセイヨウカボチャの系統である。画像は比較的整った球形であるが、条件が良ければかなりの大きさに成長するので、自重でひしゃげたような形状になることが多い。
このオレンジ色(条件によっては緑色っぽくなることも)のとてつもなく巨大な果実をつける品種は人目を引くので、展示用や観賞用には良いが、食用となると水っぽくて大味で到底向かない。コンテストが終わった後は砕いて動物の餌にするという。


形状が面白いものに、ターバンスカッシュ(Turban squash)またはターキッシュターバン(Turkish turban)というものがある。これは横から見るとターバンを被った男の頭のような形状の果実を実らせる品種である。
果実は赤色で、果頂部は緑色ないしは白色で、独特の模様が出る。アメリカではこれをスープやピュレにして食べるが、果肉が水っぽくて味が薄く、また青臭いことがあるため、我が国では食用というよりは観賞用にすることが多い。
中国の清代の本草学者・呉其濬(ごきしゅん)による植物図鑑・「植物名実圖考」には「套瓜」という名前でターバンスカッシュらしき植物の図がある。日本では明治時代初期に植物学者・伊藤圭介(1803-1901)がこの書物を再販しているが、目次で「套瓜(トルコボウシ)」とルビを振っており、ここから「套瓜」がターバンスカッシュであることは確実である。
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画像出典:筆者撮影。ターバンスカッシュ。古くは果実底部に「おかめ」の顔を描いて遊び道具としたため「おかめかぼちゃ」と呼ぶこともある
この果形の品種は、ほかにはアメリカのバターカップという品種が有名である。この品種は黒皮で、果実の大きさは「坊ちゃん」ほどである。ターバンスカッシュほど果実の頂部が飛び出ず、見た目も風味もえびすカボチャなどのわが国で栽培されるカボチャとよく似ている。わが国では、かつて「バターカップ」を大型にしたような「土平」という品種が山形県で栽培されていたが、果実が12㎏と大きすぎるため、現在はほとんど栽培されていない。また、福島県では昭和時代前期から「会津赤皮カボチャ」という品種が栽培されており、この品種も「ターバン・スカッシュ」によく似た形状である。
また、さらに変わった形状の品種がある。その品種は一見するとカボチャではなくウリ類のような見た目をしているが、れっきとしたセイヨウカボチャである。岐阜県で栽培される「宿儺」はヘチマを思わせるような形状で、表皮はすべすべしており、果皮は灰緑色で果肉は鮮やかな黄色である。糖度が高く、スープやデザート、煮物に使用されることが多い。新潟県で戦後から栽培されている「ばなな南瓜」も形状が非常に似ている。こちらは果皮が赤みの強い橙色であるが、やや形質が不安定であるため濃い緑色や赤色と緑色のまだら模様になることがある。しかし、果皮色と風味に相関関係はなく、「ばなな」の名に恥じぬ良い風味を持っている。
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画像出典:神代植物公園にて筆者撮影。「宿儺かぼちゃ」の蔓と果実。
古くは、セイヨウカボチャは以下の4種に大別されていた。現在は、わが国ではこれらのうち「デリシャス群」や「ターバン群」、それぞれの品種間の交配種が作出され、流通する。
【ハッバード群】
 東北地方や北海道でかつて多く栽培されていた品種である。かつては「ナタワレカボチャ」とも呼ばれた。果実の形状は卵型で先端がとがり、果皮は黒緑色ないしは橙赤色で厚く、表面は平滑かややごつごつしている。「トゥルーハッバード(グリーンハッバード)」「ゴールデンハッバード」「ナタワレ南瓜 白寿」などが代表品種である。
【デリシャス群】
 現在の主力品種の系統である。果実の形状はハート形ないしは変球形である。果皮は厚いが、たいていは平滑である。果皮の色は黒緑色ないしは灰色、橙赤色、灰色がかった青緑色である。「ハッバード群」より促成栽培に適するため、次第にとってかわられた。「中村早生(成金南瓜)」や「芳香青皮栗(東京南瓜)」「黒皮甘栗」「打木赤皮甘栗」等はこのタイプである。現在人気の「えびす」は「芳香青皮栗」と「黒皮甘栗」を交配させたF1品種である。
【ターバン群】
 花冠の蜜盤が発達し、花痕部の周囲が大きなボタン状のへそになる珍しい品種である。果皮の色は黒緑色ないしは灰色、橙赤色である。代表品種に「ターバンスカッシュ」(上参照)や「バターカップ」「土平南瓜」「蔵王南瓜」「会津赤皮」など。
【マンモス群】
 果実が巨大になる品種である。果実は水分が多くて食用に適さず、普通コンテスト用か家畜飼料に供する。古くは「ポンキン」「ブタカボチャ」と呼ばれた。代表品種に「アトランティック・ジャイアント」「マンモス・チリ」「ショ―キング*7」「ビッグマックス*8」などがある。

ニホンカボチャ(Cucurbita moschata) Edit

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画像出典:筆者撮影。左の品種は「黒皮」。菊座型のいわゆる「ボウブラ」。右の写真のうち、ごつごつした瓢箪型のものは「鹿ケ谷」(いわゆる「トウナス」)、ヒシャク状のものは「鶴首」、「鶴首」の隣の、模様入りの菊座型の品種は「砂糖縞」という品種である(農業生物資源ジーンバンクより)。
古くは単に「カボチャ」と言えば本種を指した。我が国にはカボチャ類の中で最も早い時期に伝来しており、渡来時期は桃山時代初期とされ、ポルトガル人が豊後府内に漂着した際、領主・大友義鎮に献上したという逸話がある。日本では当初観賞用であった。
当時医学界の権威書であった「本草綱目」に本種と思われるカボチャの図が収録されているが「有毒である」と記されており、なかなか食用としては利用されなかったのである。一応、桃山後期にはカボチャが有毒であるという情報は改められており、長崎では現地在住の中国人に卸すため栽培されていたという記録があるものの、現地の日本人が食していたかどうかは不明である。しかし、江戸時代前期の元禄10年(1697年)になると、農学者・宮崎安貞によって「農業全書」が出版され、その書物にはすでにカボチャが登場しており、さらに同時期に本草学者・貝原益軒による生物百科事典「大和本草」にもカボチャに関する紹介がみられることから、このころにはすでにカボチャ(二ホンカボチャ)が人口に膾炙する食材になっていたことは想像に難くない。
果実はゴツゴツして皺や襞のあるものが多く、会津(福島県)、黒皮(千葉県、熊本県、宮崎県)、菊座(東京)、縮緬(愛知県、岡山県など各地)、鶴首(愛知県、福岡県、宮崎県)、鹿ヶ谷(京都府)など地方の様々な品種があり、江戸時代には菊座型のものはボウブラと呼ばれ、ひょうたん型の品種、特に鹿ヶ谷の系統はカボチャないしはトウナスと呼ばれたが、現在はこのような区別はほとんどなくなっている。葉は少し切れ込みのある心臓型で、果梗は5角形で、木質化し、果実に接する部分[いわゆる「座」)が広がる。品種によっては葉に白い斑紋が入るが、これは特性であって病気ではない。ただし、葉が粉を吹いたように真っ白になっていれば、それは十中八九うどん粉病にかかっている。
セイヨウカボチャに比べて甘みは弱く、出汁をよく吸うため和食には欠かせないのだが、えびす南瓜やみやこ南瓜などの甘みが強いF1品種のセイヨウカボチャの台頭により古くからの在来種の多くが姿を消し、それに伴って生産量が激減し、現在は百貨店や料亭に卸すくらいの量しか栽培されなくなった。
果皮の多くは当初は黒に近い緑色だが、熟すと柿色ないしは黄褐色になり、甘みもやや増す。種子はセイヨウカボチャよりは薄い。
現在はニホンカボチャの中でも甘みが強いアメリカ産の「バターナッツ」(果形はひょうたん型で、表皮はベージュ色ですべすべしている。カボチャ類の中でも耐暑性が強い部類である)という品種の人気が高まっており、昨今の地産地消ブームも相まって、ニホンカボチャの真価が見直されつつある。
本種の性質は大まかに4つに分けることができる。
【菊座郡】
果実の形状は扁球形で、果実の表面にコブがほとんどない品種で、縦溝が鮮明な品種群。品種によっては斑紋を生じることがある。代表的な品種に黒皮、白皮砂糖、会津小菊、三毛門など。フランスで栽培される「マスキード・プロヴァンス(Musquee de Provance)」という品種は本種とよく似た形状で、巨大な果実をつける。果実が極端に大きくなる品種は味が薄いことが多いが、この「マスキード・プロヴァンス」の風味は非常に優れている。
【縮緬郡】
果実の形状は扁球形で、果実の表面に細かなコブを生じ、縦溝がほとんどはっきりしていない品種である。代表的な品種に、干潟、愛知縮緬、備前縮緬黒皮、見附、田尻など。
【トウナス郡】
果実の形状は瓢箪型で、果実の表面に細かなコブを生じるか、縦溝が鮮明に走る。斑紋はない。また、生理現象によるもので、果実の形状が下が膨れたフラスコ型やしずく型になることもある。代表的な品種は、鹿ケ谷。
【鶴首郡】
果実の形状はトウナス郡とよく似ているが、果形はヘチマに似ることもあり、果実の表面はつるりとしていて、特有の斑紋がある。おそらくは中国で発展し、日本に導入された品種群であろう。福岡県や愛知県で栽培されてきた。代表的な品種に、鶴首、江南長。果実の色は最初は黒に近い緑色だが、熟すと黄色に近い褐色になる。右写真のように、果実にうっすらと黄色い模様が入ることがある。果形がベージュ色のアメリカの品種「バターナッツ」や沖縄の「島カボチャ」も本種とよく似ている。また、イタリアで栽培される「トロンボンチーノ」という品種は首の部分が細長く、ふくらみがより丸みを帯びる。こちらは若い果実をズッキーニのように利用することが多いが、熟した果実も焼いて食することがある。

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(左上)バターナッツ。煮物には向かないが、グリルやポタージュに向く。見た目が面白いので、観賞用にされることもある。自宅にて筆者撮影。果実はそれほど大きくないので家庭菜園に向く。(右上)小菊。自宅にて筆者撮影。菊座型で、果実が小さいのが特徴。煮物にしてもよいが、中身をくりぬいて食材を詰め、蒸してもよい。(中左)会津小菊。福島県会津若松市にて筆者撮影。全体的に丸みを帯びた形状で、果皮表面には黄色いかすり模様が入る。(中右)トロンボンチーノ。イタリア古くから栽培されてきた品種。自宅にて筆者撮影。(左下)黒皮ちりめん。自宅にて筆者撮影。表皮は黒緑色で、溝の判別はややつきがたく、表面が細かいコブでおおわれてぼこぼこしている。写真のものは熊本県産であったが、千葉県で栽培される「富津黒皮」や岡山県で栽培される「備前縮緬黒皮」はこの見た目に近い。(右下)マスキード・プロヴァンス(Musquee de Provance)。フランスで古くから栽培されている品種で、巨大な果実をつける。大きな見た目に反して味は繊細で、安納芋に似た風味がある。写真は観賞用として自宅近くの園芸店に展示されていたものを撮影した。

ペポカボチャ(Cucurbita pepo) Edit

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画像出典:筆者が自宅にて撮影。左のウリ型の品種はDelicata(「スイートポテト南瓜」とも呼ばれる)、右上のオレンジ色の品種はJack be little(生育環境によるものか、緑色の模様ができている)、右下の白色と緑色の縞模様の菊座型の品種は錦甘露。いずれも観賞用はもちろん、サツマイモを思わせるような甘みがあって、食用にすることができる。右:「キントウガ」。筆者の蔵書「原色図説植物大辞典」(1938年)より抜粋。
我が国には明治時代に渡来したとされる。草姿は二ホンカボチャに似るが、果梗は多角形で、末端がやや太くなる程度で、果実との接合部は膨らまない。
様々な変種があり、果実の形状や色合いも千差万別である。特に、様々な形状や色合いに富んだ小型の果実をつける品種は「カザリカボチャ」「オモチャカボチャ」「オーナメンタル・ゴード」(ornamental gourd)と呼ばれる。この品種群は果皮が固くて包丁では切ることが難しく、果肉も繊維質で味が悪いのでもっぱら観賞用にされる。
食用にされるものとしては花が咲いてから一週間弱の若い果実を食用にするズッキーニや、加熱すると果肉が繊維状にほぐれるキンシウリ(そうめんカボチャ)、湯呑ほどの大きさで菊座カボチャに似た形状の「錦甘露(にしきかんろ)」(英名はSweet Dumpling)などがある。ズッキーニキンシウリについてはそれぞれ別の項で述べる。
「本草図譜」や「有用植物図説」などの江戸時代や明治時代の植物図譜に「金冬瓜(キントウガ)」「阿古陀瓜(アコダウリ)」というオレンジ色の果実のウリ科植物が見られるが、植物学者の牧野富太郎によれば、これはペポカボチャの一種に相当するという。牧野著書「牧野日本植物図鑑」にも金冬瓜の解説が図とともに紹介されている。また、1608年に豊臣秀頼により建築された京都北野天満宮の拝殿の蟇股部分に金冬瓜の彫り物がみられるという。
現在はいずれもほとんど見かけないが、古い植物図譜から果実の形状が確認できる。金冬瓜がウリ型で長い形状であるのに対し、阿古陀瓜は球形。兜やぼんぼりの中でカボチャのような形状が「阿古陀」と呼ばれるのは、この阿古陀瓜が由来とされる。ただし、室町時代前期に詠まれた阿古陀瓜についての詩があり、その時代にはまだカボチャの類は日本に導入されていないので、阿古陀瓜をカボチャ属とは別のウリ科の植物(マクワウリの一種)として見る向きもある。
なお、かの有名な名探偵・シャーロックホームズの趣味の一つに家庭菜園があり、その中では「ナタウリ」という野菜が育てられている。これはペポカボチャの一種で、Marrowという英名がある。果実はズッキーニを大きくしたような、巨大な冬瓜と見まがうほどの見た目をしており、スイカのような縞模様が出ることもある。ズッキーニと同じく開花から一週間以内の若い果実か、ズッキーニより少し熟した程度の果実を食用にする。表皮が硬くなるまで育てて、観賞用にすることもある。果皮は鉈でないと割ることが難しいほど固くなるため、「ナタウリ」の和名がある。
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画像出典:村越三千男 編・画『内外植物原色大圖鑑』第1卷(合辨花),誠文堂新光社,1939.12. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/1900775 阿古陀瓜の画像。金冬瓜とよく似ているが、果実の形状が丸いので区別できる。

カボチャは必ずしもpumpkinに非ず Edit

この文言を見た読者の方々からはおそらく「お前は何を言っているんだ。カボチャはpumpkinで間違いないだろうが」とお叱りを受けるだろうが、落ち着いて以下の文言をよく読んでほしい。
欧米の英語圏ではカボチャをもっぱら4種に分けている。
まず1つがpumpkin。ハローウィンの提灯、いわゆる「ジャック・オ・ランタン」*9に使われる大きなオレンジ色のカボチャがこれだ。こちらはランタン以外にも種子を炒って殻をむいてから塩を振りかけて酒のつまみにしたり、果肉をパイとすることもあるが、果肉は水分が多くて味が薄いので、濃い味付けをしない限りはとても食べられたものではない。近年はこの系統はむしろ観賞用カボチャとしての利用が多い。
2つ目がSummer squash。これは夏に若どりするカボチャの系統で、ズッキーニやスキャロープ*10、エホバク*11がこれにあたる。近年サラダ野菜として人気を集めている、黄色い未熟果を生食するセイヨウカボチャの「コリンキー」という品種も含まれる。
3つ目がWinter squash。これは晩夏〜秋に熟した果実を収穫し、冬まで保存が効くカボチャを言う。この中に、黒皮南瓜などのニホンカボチャやえびす南瓜などのセイヨウカボチャが含まれる。なお、ペポカボチャの多くがsummer squashに含まれるが、キンシウリ(そうめん南瓜)やdelicata*12、錦甘露などは熟した果実を食用とするため、winter squashに含まれる。
4つ目はGourd。これはウリ科ユウガオ属のヒョウタンの英名でもあるので、混同を避けてYellow flowered gourd*13やOrnamental gourdとも呼ばれる。これは、ペポカボチャの中で「オモチャカボチャ」または「カザリカボチャ」「花かぼちゃ」と呼ばれる品種の総称である。これらの品種は果肉の繊維が粗くて食感が悪く、味もほとんどしないかごくわずかに渋いので食用に向かず、観賞用ないしはお盆のお供えにされるが、表面を乾いた布で数回磨いたのちに乾燥させるとヒョウタンのように木質化する。
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画像出典:筆者が大学の庭園で撮影。いわゆるPumpkin。
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画像出典:エホバㇰ(애호박)。自宅にて撮影。いわゆる「韓国カボチャ」として知られる。イメージしやすくするため「韓国ズッキーニ」とも称されるが、この品種は二ホンカボチャの若どり果実なので、ズッキーニ(ペポ種)とは異なる。若どりした果実を食すので、英語圏で言うところのSummer squashにあたる品種ではある。
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画像出典:筆者撮影。わが国で栽培されるカボチャはwinter squashに分類されるものがほとんどである。左上:日向南瓜(黒皮南瓜)。右上:黒皮栗(ほっこりえびす)。下:夕顔南瓜。二ホンカボチャの一種で、鶴首に似ているが、あまり首が曲がらずヘチマのような形状になる
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画像出典:飛車撮影。オモチャカボチャ、いわゆるGourdのコレクション。オモチャカボチャは「花かぼちゃ」とも呼ばれ、観賞用専門のカボチャである。多くの形状や色合いがある。

カボチャにまつわる諺 Edit

  • 南瓜に目鼻
    あまり器量のよくない顔立ちのこと。
  • 太る南瓜に針を刺す
    上手くいっているものごとに、余計なことをして台無しにしてしまうこと。
  • 陰地の南瓜は這いまわるばかり
    人前で常に「すみませんすみません」とペコペコしている様。
  • 見かけボウブラ
    福岡県の諺。見た目は立派だが、中身が伴わないこと。「ボウブラ」はカボチャの福岡県での呼び名。類似表現は「独活の大木」。
  • 道理で南瓜が唐茄子だ
    大いに納得するさま。
  • 今年は南瓜の当たり年
    余り風貌のよくない男性、もしくは女性の縁談が成立したことをあざけって言う言葉。
  • 医者・坊主・南瓜
    医者や僧侶は経験を積んでいる者がよく、南瓜は熟したものがよいということ。

コメント Edit

  • ほんとこのページ作っている人すごいよね -- ? 2023-03-25 (土) 07:36:58
  • すごい -- りゅう? 2023-09-28 (木) 08:18:12

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*1 風通しの良い場所で保存すること。収穫後に蔕の切り口から雑菌が入って腐ってしまうのを防ぐ。サツマイモもこの処置を行ってから出荷する
*2 戦後の食糧難に対応するため作出された品種である。果実の形状はコロンとした球形だが、表面はややゴツゴツしている。甘さはセイヨウカボチャに比べて弱い
*3 深緑色で、果重は500g程度。ややごつごつした見た目である
*4 「坊ちゃん」より一回り大きく、果皮色は鮮やかな緑色
*5 「坊ちゃん」と同程度の大きさと果皮の色合いで、果皮はつるりとしている
*6 名前の通り、果実を数多く実らせる品種で、放任栽培に向く。果実の大きさは700gほどになるが、整枝栽培をすれば果実の大きさは1㎏内外になる。果皮表面はつるりとしていて、ややくすんだ緑色である
*7 「アトランティック・ジャイアント」に似るが果皮は灰緑色である
*8 「アトランティック・ジャイアント」よりは果実は小さくなる
*9 この名称は、アイルランドにいたジャックという人物にちなんでいる。昔、アイルランドにジャックという偏屈な老人がいた。ジャックは生前のふるまいから、天国に行けなかった。そこで地獄行きが決まったのだが、ジャックは悪魔をいじめて自身を天国に行くように仕向けさせたため、地獄にも行けなくなり、この世とあの世を永遠にさまようこととなった。ひどい目にあわされたにもかかわらず、悪魔はお人好しな性格であったため行き場を失ったジャックを哀れに思い、赤く焼けた炭をジャックに渡した。ジャックは、たまたま道端に落ちていたカブをくりぬき、そこに赤く焼けた炭を入れ、提灯の代わりとした。この言い伝えにちなんだ風習はやがてアイルランドからイギリスに伝播している。イギリス人がアメリカ大陸に入植し、秋にその風習を行おうとしたが、当時はカブがなかったので、カボチャで代用したところ、こちらが主流となった
*10 円盤型の果実をつけるズッキーニの一種。風味は棒状のズッキーニと大して変わらない。熟してコチコチに硬くなったものは観賞用にされる
*11 韓国の若どりカボチャで、ズッキーニを一回り大きくして色を薄くしたような見た目をしているが、植物学上はニホンカボチャの一種
*12 楕円形で、白地に濃い緑色の縦じまが入る品種。サツマイモに似た特有の風味があり、グリルに適する。わが国では戦前から家庭菜園用の野菜として栽培されており、「スイートポテト南瓜」の名称でも知られた
*13 ユウガオ属のヒョウタンが白い花を咲かせることへの対比

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