トウガンは、果実を食用とするために栽培する作物の一種である。 画像出典:(上)トウガンの花。/(下)トウガンの果実。いずれも東京都薬用植物園にて撮影。熟すと表面にロウ質の粉を吹く品種である。
冬瓜(とうがん)。ジャワが原産のつる性一年草で、我が国には奈良時代から平安時代にかけて中国を経由して渡来している。和名は冬まで保存でき、湿気のない冷暗所であれば長期間保存しても味が落ちにくく、かつ腐りにくいため「冬瓜」と呼ばれる。本来は「とうが」と発音するのが正しいのだが、現在は「とうがん」と訛った発音が広まっている。京都加茂付近で多く栽培されたことからカモウリの名称でも知られており、平安時代の「本草和名」にはすでにその名がみられるという。 草姿はカボチャに似ており、花もカボチャのそれとよく似た黄色く大きな花を咲かせるが、葉はカボチャのそれよりも切れ込みが深く、簡単に区別できる。 果実は鮮やかな緑色をしており、形状は円筒形か上下を押しつぶしたような臼型で、細かな繊毛で覆われるが、果実が熟するにしたがって次第に抜け落ちてくる。別名のカモウリは「ケモウリ」が訛ってできたものともされる。在来種は熟すと表面にロウのようなブルームを吹くことがあるが、現在流通しているのは沖縄種で、こちらの場合ほとんどブルームを吹かない。これは、ブルームが農薬と誤解されるようになり、需要が在来種から沖縄種に取って代わられたためであろう。とはいえ、現在は地産地消のながれも相まってか、地元で古くから栽培されてきた在来種トウガンも顧みられつつある。 大玉スイカの1.5~2倍の大きさに成長するため、普通は8分の1に切られて流通するが、「姫冬瓜」のように果実が小さく、丸のまま流通する品種もある。「姫」とは言っても、果実の大きさは小玉スイカほど(果重は2㎏程度)である。 中国では、本種の変種にあたる「節瓜」ないしは「毛瓜」という野菜(Benincasa hispida var. chieh-qua)が栽培されている。これは、未熟なうち、それも受粉から数日~一週間後の若い果実を収穫し炒め物やスープの具材として利用するものである。西洋でいうところのズッキーニのような野菜である。わが国でもかつては紀州で「丁仙瓜」という小さなトウガンの未熟果を利用することがあったようだが、現在ではほぼ見られなくなった。 画像出典:「姫トウガン」という品種。東京薬科大学薬用植物園にて筆者撮影。 調理法としては、汁の実や煮物にして食す。中華料理にトウガンの翡翠煮というものがあるが、これは、トウガンの薄皮を残して剥いたものを他の具材と共に醤油や中華スープで煮込んだものである。また、大きなトウガンのタネやワタを除いたものに肉や野菜、中華スープを入れて蒸したダイナミックな調理法もある。インドでは、トウガンをキューブ状に切って砂糖で煮込んだ「ペーター」というお菓子がお茶請けとして人気である。なお、「ペーター」とはヒンディー語で冬瓜のことである。そのまんまである。 種子は冬瓜子(トウガシ)と呼ばれ、漢方薬の原料として知られる。咳止めや膿を出しきるのに効果があるという。
画像出典:https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Tindas_2017_B1.jpg 著作者:Fructibus(CC0) インドで栽培される果菜の一種で、かつてはカボチャの一種ないしはスイカ属に属するとする説が根強かったが、現在はトウガンの近縁種であるという結果が出ている。 果実は上から押しつぶしたような球形で、表面は産毛でおおわれるが、この産毛はしばしば抜ける。若い果実を炒め物や煮物、サラダにする。熟してくると果皮が硬くなってやや食べにくくなる。