モモ(桃)は、バラ科の落葉高木である。
画像の出典:花、果実のいずれも東京都薬用植物園にて撮影
果実を生食用や缶詰とするために栽培される。我が国には弥生時代に中国から渡来していることが推測され、当時の遺跡から炭化した種子が発見されている。我が国のモモの最古の記録は「古事記」「日本書紀」に見られる。樹高は2m程度で、早春に薄桃色の花を咲かせる。 わが国における前近代のモモは甘みも薄く、果実もスモモくらいの大きさしかなかったという。どちらかといえば、喉の乾きを癒やすためのスポーツドリンク的な役割を果たしたと思われる。明治時代に中国の優良な品種が導入されて改良され、現在のように甘みの強い品種の原型が出来上がってきたという。 樹高は5mほどになり、樹皮は銀色の光沢のある黒褐色で、老木になるとひび割れる。葉は幅5cm、長さ15cm程度の細長い楕円形で、葉縁は粗い鋸歯状となる。3月から4月の上旬にかけて5弁または多重弁の花を咲かせる。普通花色は薄い桃色であるが、白い花を咲かせる園芸品種もある。花の柄が非常に短いため、枝から直接開花しているように見える。7月から8月にかけてハート形に近い球形の紅差しの生成り色の果実をつけ、果実表面には縦に1本の筋が入る。 果実の表面には産毛があり、これが虫による食害を防ぐとされるのだが、皮膚の弱い人はこのモモの毛にかぶれるという。 果皮が白色に近いものは白桃と呼ばれ、モモの中でも高級品である。缶詰に使われる桃は果肉や果皮が黄色いものが多く、これらは黄桃と呼ばれる。近年は生食に向く黄色い品種もある。 果実は薄い果皮で覆われているのだが、少し擦れたりぶつけただけでそこから傷み始め、やがて腐ってしまうという非常にデリケートな果物として知られる。果物屋やスーパーマーケットないしはデパートの果物売り場で、クッションの役割をする柔らかいネットに厳重に包まれた上でプラスチックのパックに詰めて売られる事が多いのはそのせいである。買う気がないのに、売り物として陳列されているモモを執拗に触ってはならないのである。 このデリケートさは、原産地の中国の高原地帯に起因する。現地は温度変化が少なく、湿度も一定してあまり変わらない環境なのである。わが国のような気候環境は本当は苦手なので、丁寧な温度管理が必要となる。更に、害虫や病気にも弱いので、栽培にはかなり手間がかかる。
画像出典:大学の庭園にて撮影 薄いピンク色の花を観賞用にするため栽培する。3月が花期で、菊桃などの多くの園芸品種が作出されている。ハナモモの品種はあくまでも観賞用として栽培されるため、果実はつけないか、つけることはあっても多くは小さくて固く、味も悪いので食用にはしない。ただし例外的に、「照手水密」という枝垂れ性の品種は食用の品種と交配しているので、果実を食用にすることができる。
画像の出典:https://iiif.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/repo/s/agriculture/document/5bfde8bf-0b54-7848-97d6-1ee30cf9a645#?c=0&m=0&s=0&cv=26&xywh=-810%2C-1%2C6863%2C4094 有用植物図説(東京大学総合図書館所蔵)を改変 現在ではネクタリンの名で呼ばれることのほうが多い。通常、モモの果実の表面には細かな産毛があるのだが、本種にはそれがなく、表面に光沢を生じ、果皮は鮮やかな赤色になる。和名のズバイモモまたはツバイモモは、果皮表面の色がツバキの花を思わせるため、「ツバキモモ」と呼んでいたものが訛ったものである。また、果皮表面が油を塗られたように見えることから、アブラモモの名前で呼ばれることもある。モモと同じように、果実を生食あるいはジュースにする。江戸時代の植物図鑑「本草図譜」にはすでに図版と解説が見られる。
画像出典:https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Peaches-in-Soft-Focus-by-Raju-C-Reddy.jpg モモの一品種で、果実の真ん中がくぼんでいて、上下に押しつぶされたような珍しい品種である。種子が小さいので、果実の見た目の大きさに反して可食部分が多い。 「西遊記」において、孫悟空が天帝から桃園の管理を命ぜられた際に言いつけを破って盗み食いしたのが本種であるとされる。
画像出典:自宅にて撮影 果皮が黄色い品種である。これまでは甘みが弱く、果肉の肉質も硬いため、砂糖で煮てから缶詰にすることが多かったが、現在は缶詰のみならず、生食用に改良され食味をよくしたものも流通している。