スズラン(鈴蘭)とは、山野草の一種である。
画像出典:(左)スズラン。牧野記念庭園にて筆者撮影。/(右)ドイツスズラン。四ツ谷駅付近にて筆者撮影。 科名:キジカクシ科スズラン属 学名:Convallaria majalis L.var.manshurica(=Convallaria keiskei) 原産地:日本、朝鮮、中国、シベリア東部 生態:多年草 北海道に多く生息し、本州中北部にみられるほか、関西や九州の山地にも生息例が知られる多年草である。 葉は幅広い形状で、ハランの葉を小さくしたような形状であるが、下部で抱き合わせるような形状になる。草丈は15㎝から20㎝程となり、晩春に葉のわきから一本の花茎を出し、芳香を放つ白い釣り鐘型の花を複数下に向かって吊り下げるようにして咲かせる。花の後には直径5㎜程度の赤い球形の果実を鈴なりに実らせる。和名の「スズラン」は花の形状を小さな鈴に例えたものである。 花屋で「スズラン」という名称で出回っているのは本種ではなく、明治ごろにわが国に導入されたヨーロッパ原産のドイツスズラン(Convallaria majalis)である。本種とドイツスズランは、葉の裏の色で区別する。本種の葉の裏は薄い緑色であるのに対し、ドイツスズランの葉の裏は濃い緑色である。また、日本在来種のスズランよりドイツスズランの方が花の咲かせる数が多く、かつ花の芳香が強い点でも区別できる。現在はこのドイツスズランは日本在来種の変種とみる向きも強い。 本種は有毒植物としても知られており、コンバラトキシンやコンバラマリンなどの有毒成分を全草に含んでいる。誤食すると嘔吐、頭痛、眩暈、血圧低下、心臓麻痺などの症状を起こし、重傷の場合、心不全から死亡に至ることもある。花の後に実る赤い果実はおいしそうな見た目をしているため、子供が誤って食べてしまった事例が知られている。また、若い芽をギョウジャニンニクと誤って食してしまった例が知られている。本種の毒性分は水に溶けだしやすく、本種による中毒事故のもっと悲惨な例に、ある病院に入院していた5歳の男児がふと夜中にのどの渇きを覚え、ベッドのそばに生けられていたスズランの一輪挿しのコップの中の水を飲み干し、そのまま帰らぬ人となってしまった例が知られている。 とはいえ、口に入れなければどうということのない植物で、手入れもしやすいことから春の花壇を飾ってくれる良い素材となりうる。