ジンコウ のバックアップ(No.2)

ジンコウ(沈香)とは、香木の一種である。
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画像出典:村越三千男著『大植物図鑑』(国立国会図書館所蔵)より抜粋


科名:ジンチョウゲ科アクイラリア属
学名:Aquilaria agallocha
原産地:インド
生態:常緑低木


 インド東部が原産の香木で、わが国には産しない。樹高は約1.5mほどで、幹の太さは30㎝内外である。葉は披針形で枝に互生する。
葉は散形花序で、白い五枚の花弁からなる花を咲かせる。本種は「香木」と前述したが、必ずしも全ての個体が香木となるわけではない。
樹皮に虫が穴を開けたり、人為的に切り傷をつけるなどの何らかの樹皮が傷つく要因があって、内部に沈香という樹脂を沈着するというわけである。植物体に傷がつくと樹脂が分泌される仕組みについては長い間不明であったが、2022年の研究により複数の酵素によるものであることが分かっている。そうして、分泌する樹脂を数年経過したのちに切り取り、火をつけて芳香剤(ビャクダンとは異なり、そのままで香りを放つというわけではない)または薬用として利用するのである。枯死した樹に自然に蓄積されたものが良品であるとされ、とくに最高品質のものは「伽羅」と呼ばれる。薬用としては、結核菌への抑制効果やチフス菌への抗菌作用、鎮静剤、解毒剤、健胃薬として強い効果を発揮するという。
 わが国には大和時代に淡路島に本種と思われる香りを放つ木片が漂着したのが最古の記録である。奈良の東大寺正倉院には長さ156cm、最大径43cm、重さ11.6kgもの「蘭奢待(らんじゃたい)」というかなり大きな香木が収められており、これも沈香の一種であるとされている。この香木の木片を所有するということは、自身が自国の最高権力者としての地位に立ったことを意味し、かつて足利義満・足利義教・足利義政・織田信長・明治天皇の5人が切り取っている。彼らが切り取ったとされる部分にはそれぞれ付箋が貼られ、今もなお正倉院において大切に保存され、年に一度一般公開されている。

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