ジギタリスとは、園芸植物の一種である。
画像出典:いずれも東京都薬用植物園にて筆者撮影 科名:オオバコ科ジギタリス属 学名:Digitalis purpurea L. 原産地:ヨーロッパ南部 生態:多年草 ヨーロッパ南部の地域が原産の多年草で、わが国へは徳川時代末期に渡来したものと思われ、その証拠として同時期に活躍した本草学者・馬場大助の手掛けた西洋の植物の図譜『遠西舶上画譜』に図がみられることが挙げられるが、広く知られるようになったのは明治以降である。 茎は根際から数本が立ち上がり、株となって高さ1mほどとなり、枝分かれせず、腺毛に覆われる。葉は長楕円形で全縁となり、表面には縮緬状の皴があって縮れたような見た目になる。 春から初夏にかけて花序の下から赤紫色ないしは白色の指抜きを思わせるような形状ないしは釣り鐘型の筒状の花を咲かせる。開花後に小さな蒴果を結んでのちは地上部が枯れ、翌年の春までを地下の塊根のみで過ごす。和名では「キツネノテブクロ」と呼ぶが、それはこの花の形状が手袋の指のように見え、それをあたかも狐がはめているかのような情景を連想したことからこの名称がある。 本種は全草、特に葉に「ジギトキシン」という猛毒成分を含んでいるが、本種の根は強心剤として利用された歴史がある。しかし少しでも量を間違えると心臓の病の助けとなるどころか、むしろ患者の心臓を止めかねないので薬としての安易な利用は控えたいものである。また、本種の葉はかつては健康食品とされていたコンフリーの葉とよく似た見た目をしているため、古くは誤食事故も頻繁に発生していたが、2004年にコンフリーからも、加熱しても壊れない肝毒性の有毒成分が含まれていることが明らかになっていることから、コンフリーも有毒植物として認識されるようになり、誤食事故の発生が激減している。