カワカワとは、薬草の一種である。 画像出典:東京都薬用植物園にて筆者撮影 科名:コショウ科マクロピぺル属 学名:Macropiper latigfolium 原産地:南太平洋諸島 生態:つる性常緑低木 南太平洋諸島が原産の蔓性常緑樹で、わが国では現在標本的に植物園で栽培される程度である。 樹高は3m程度に達する。葉は幅・全長いずれも20~25㎝程度の丸みを帯びたハート形で、先端が尖り、サツマイモの葉を思わせる見た目である。葉縁は全縁であるが緩やかに波打ったようになっている。葉の表面には光沢がある。 葉腋から数本の穂状花序を上向きに出し、白色の小さな花を密生する。花を咲かせ終わった後には液果を上に向けるがごとく房状につける。ただ、雄株が多く、雌株が少ない傾向にあるので、実生による生殖よりむしろ栄養生殖に特化しているという。 ミクロネシアやフィジーなどの南太平洋諸島の地域では、古くから宗教的な歓迎の儀式、例えば結婚式や収穫祭などの際にはこの植物の根を乾燥させて粉末にしたものを水に混ぜたものか、あるいは根を水の入った容器の中で揉みしだき、それを濾してできた泥水のような見た目の液体を服用してきた。こうして作られた飲み物は苦みがかなり強く、そのせいでやゝ下が痺れるという。本種から作られた飲み物はアルコールこそ含まれてはいないものの、酩酊効果があり、それによって一時的に精神的にすっきりとした快感を与えてくれるという。それゆえ、近代的医療が発展するはるか昔から抗鬱効果があるとして、不安やストレス、更年期障害等を緩和させる目的でも用いられて来た。このことはあながち間違いではなく、こんにちでも医学の世界では鬱病を治療する目的で投与されることがある。これ以外にも、歯痛、腹痛、腰痛、関節痛、呼吸器疾患などを押さえるのに効果があるという。 近年は研究が進んでおり、本種がアルコール効果を増進させる作用も認められている。またダイエット効果もあると言われ、本種からは各種のダイエット用サプリメントが作成されてもいるが、アメリカ食品医薬局では、「本種を配合した健康食品が重度の肝機能障害をもたらす」と警告している。こうした指摘に対しては「そうした症状は本種(カワカワ)だけのせいというわけではなく、配合された別の植物の毒素によるものである可能性も捨てきれない」とする意見もあるが、現在は本種を健康被害を引き起こす有毒植物として見る向きも強まっている。わが国でも全草に含まれる成分が「医薬品の原材料に該当する」という理由から、全草を食品として使用並びに販売することはできない。また本種を配合した医薬品は「無承認無許可医薬品」として監視取締の対象となっているので、インターネット通販で本種が配合されている医薬品を発見した場合は絶対に購入してはならない。