イタヤカエデ(板屋楓)とは、樹木の一種である。 画像出典:小石川植物園にて筆者撮影 科名:ムクロジ科(旧カエデ科)カエデ属 学名:Acer pictum Thunb. 原産地:東アジア 生態:落葉高木 サハリンや朝鮮半島、中国北部からアムールにかけて分布する落葉高木で、わが国においては各地の低山帯に生えるほか、観賞用のため庭に栽培する。 樹高は20mほどとなる。葉は全長5㎝~10㎝で、枝に対生し、縁に鋸歯がなく、5つに浅く裂ける。カエデ類というとどうしても真っ赤な「紅葉」を連想させるが、本種の葉は秋に黄色く変色する。このように、葉が赤くならないことから「常盤楓(トキワカエデ)」の名を持つ。樹皮は灰色がかった褐色で、木が老いると浅くひび割れる。4月から5月ごろにかけて黄緑色の花が咲き、翼果は熟すと褐変し、直角から鋭角に開き、やがてくるくると回りながら地面に落下し、そこに再び根を下ろして発芽する。 材は硬いのでスキー板や楽器の原料として用いる。わが国に古くから生息するカエデ類の中で最も甘い樹液を持つので、この樹液を採取してタバコの香りづけに用いる。 和名は、葉がよく茂ってさながら板で屋根をふいたようになり、雨が降っても雨漏りしないことからきている。 多くの種内分類群に分けられ、切れ込みがやや浅く、葉が大ぶりのオニイタヤ、葉の切れ込みが非常に深くなるエンコウカエデ(subsp.dissectum)、葉の切れ込み方を鯉のぼりの先につける「矢車」になぞらえたヤグルマカエデ(subsp.pictum)、東北地方や北海道に多く生息するエゾイタヤ(subsp.mono)、エゾイタヤに似て若い葉がしばしば赤みを帯びるアカイタヤ(subsp.mayrii)などが知られる。 画像出典:https://www.ootk.net/cgi/shikihtml/shiki_847.htm『四季の山野草』の「オニイタヤ」のページから。葉が大ぶりとなるさまは、鬼の名に恥じない。 画像出典:https://www.ootk.net/cgi/shikihtml/shiki_1325.htm『四季の山野草』の「エンコウカエデ」のページから。猿猴(エンコウ)、すなわちテナガザルの手のように葉が深く切れ込む。