ここでは、昔から洋の東西を問わず「薬」として用いられてきた植物(一部地衣類や菌(きのこ)類、藻類を含む)を収録している。 太古の昔から、我々人類は植物を薬として利用してきた。そうして、経験を積んで「なにがしという草はこれくらいの量を使えば薬になるが、大量に用いると毒となる」ということを学び、応用し、多くの人命を救ってきた。それが発展して、中国の本草学やわが国の民間療法、西洋のハーブとスパイス、インドのアーユルヴェーダなどにつながるのである。実際、人の命をも奪いかねない猛毒を持つ植物が適切な量を用いれば人の命を救うことになるというのは何とも皮肉な自然の摂理である。 かつては薬効部分をそのままの形で用いることが多かったが、現在が技術が進んで薬効成分のみを抽出したり、それをエキスとしたりするなど、技術の真価には目を見張るべきである。そうして、西洋的医学が発展しつつある現在だが、そこに東洋の本草学を照らし合わせた研究もおこなわれている。 以上は薬草の恩恵について触れたが、我々が留意しておかねばならないことがある___素人判断でのやみくもな摂取はかなりの危険を伴う、ということである。実際、フクジュソウは死亡例があるほど強い毒性を持っていながら強心薬として用いられた歴史があるのだが、ある老夫婦がこの有効量をよく知らないまま「心臓によい」というだけで適当に多量摂取し落命してしまった事故の例が知られている。 「薬と毒は紙一重」ということわざがあるように、毒草であっても薬効を持ちうるものが数多くあるが、それを具体的な量などに関する知識のないままに摂取して寿命を縮めることも珍しくはない。そうしたリスクを防ぐには、まず専門医の指示を仰ぐこと。そうして、薬草に関する書籍を読んでよく勉強しておくことや薬効成分のみが抽出された医薬品を服用することが肝心である。