クリ(二ホングリ)は、果樹並びに有用樹の一種である。 画像出典:埼玉県所沢市にて撮影
北海道西南部から九州、および朝鮮半島中南部の温帯から暖帯の山地に生え、現在は果樹としても栽培される落葉高木である。山野に生えるものは特にシバグリと呼ばれる。栽培品とは異なり、果実はやや小さくなる。 初夏に花を咲かせ、虫媒花で独特のにおいを放つ。新しい枝の下部の葉腋に雄の花序をつけ、雌花はその下部につく。果実はいわゆる堅果(いわゆるナッツ)で、びっしりと棘の生えた総苞に包まれる。当初は緑色だが、熟するにつれて褐変し割れ、種実が露出する。この種実は食用となり、利用の歴史は古く、焼き栗や栗ご飯、甘露煮や栗きんとん、マロングラッセや羊羹にする。果実をむく際は下部に包丁を入れ、ぐるりと回すと剥きやすい。近年は殻をむきやすい品種も開発されている。珍しいものに、一つの種実を周りの小さな種実がぐるりと囲むようになっている「ハコグリ」と呼ばれるものがある。 材木はシイタケの種菌を植え付けるほだ木にするほか、堅くて重く、腐りにくい性質を生かしてテーブルやフローリング、鉄道線路の枕木に利用する。青森県の三内丸山遺跡からはクリの木から作られた掘っ立て柱が出土しており、縄文時代から食料や建築材として利用されてきた歴史を持つ。
横浜土産の「天津甘栗」で知られるクリはシナグリ(Castanea mollissima)という近縁種で、二ホングリとはことなり、渋皮が癒着しないので、加熱すると容易に殻をむくことができる。ヨーロッパグリ(C.sativa)は二ホングリに性質が似ており、モンブランなど洋菓子に向く。ただし、わが国の気候には不適で、経済的栽培はされていない。また、アメリカグリ(C.dentata)は古くから食材や材木としてアメリカの先住民に利用されてきた。種子は食用になり、材は硬く加工に向いているのだが、近年は「クリ胴枯れ病菌」というカビによって引き起こされる「クリ胴枯れ病」の蔓延により絶滅の危機に瀕している。 画像出典:https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Castanea_mollissima.jpg シナグリの写真。 著作権 Richard Webb(CC BY-SA 3.0) 画像出典:https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Illustration_Castanea_sativa0.jpg ヨーロッパグリの水彩画。 画像出典:https://commons.wikimedia.org/wiki/File:American_Chestnut_(Castanea_dentata)_by_Mary_Vaux_Walcott_1970.jpg アメリカグリの水彩画。