ウメ(梅)は、果樹ならびに花を観賞用にする樹木の一種である。
画像出典:花と果実の写真はいずれ東京都薬用植物園にて撮影 科名:バラ科サクラ属 学名:Prunus mume 原産地:中国 生態:落葉高木 中国が原産の落葉高木で、わが国には弥生時代に入ってきたと思われ、当時の遺跡から種子が出土している例が散見される。今日では庭木としてわが国の各地で栽培されているが、九州の大分県や宮崎県の一部には、野生化した個体がみられるという。 樹高は6mに達し、多く枝分かれし、若い枝には毛がかすかにあるかあるいはほぼない。葉は互生し、葉の大きさは5㎝~8㎝で、卵型で周囲に細かな鋸歯がみられる。1月から3月にかけて、葉の出現に先立って前年枝の葉腋に芳香のある5枚の花弁からなる花を咲かせる。花は白色や鮮やかな赤味の強いピンク色があり、品種は「豊後」(後述)や「白加賀」「南高」「紅サシ」など様々で、300種を優に超える。果実は球形で、縦に1筋の溝があり、当初は緑色だが、梅雨ごろに黄色く熟し、木から落ちて芳香を放つ。青梅はアミグダリンという生産配糖体を含んでいるので、生食すると腹痛や嘔吐などの症状を引き起こす。それゆえ、シソや塩につけこんで梅干にするほか、酒に漬けて梅酒にする。果実を黒くなるまでいぶしたものは「烏梅(うばい)」という名称で漢方薬として知られ、健胃、整腸、消炎、細菌性腸炎、腸内異常発酵、駆虫、止血、強心作用がある。
画像出典:https://iiif.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/repo/s/agriculture/document/5bfde8bf-0b54-7848-97d6-1ee30cf9a645#?c=0&m=0&s=0&cv=25&xywh=-810%2C-1%2C6863%2C4094 「有用植物図説」より抜粋 名前の通り、豊後(大分県)で古くから栽培されてきた品種である。母種のウメより葉や果実が大きい品種である。花はふつう八重咲で、薄いピンク色である。果実の直径は5㎝で、熟すと濃い橙色になる。本種はアンズとの交配品種であるとされる。果実の利用法はウメに同じで、花も観賞用にされる。
画像出典:https://iiif.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/repo/s/agriculture/document/5bfde8bf-0b54-7848-97d6-1ee30cf9a645#?c=0&m=0&s=0&cv=25&xywh=-810%2C-1%2C6863%2C4094 「有用植物図説」より抜粋 紅色の八重咲の花をつける品種で、花の後には数個の果実をまとめて漬ける。子の果実が成長しながら押し合い、1個ずつ落下していくため、牧野富太郎はこれを口論に負けたものが一人、また一人と去っていく様子にたとえ、座論梅の名称を付している。利用法はウメに同じだが、あまり利用されていない。現在は観賞用としての利用がもっぱらである。
画像出典:花と果実の写真はいずれ東京都薬用植物園にて撮影 樹形はウメに似ているが、本種は花を観賞用というよりむしろ、果実を食用として利用する専門の品種である。花は直径2ck内外で、白色。果実が直径3㎝内外であるのが特徴で、熟していない果実は梅干しや塩漬けとするほか、甘露煮にする。塩漬けしたものは近年、酒のつまみとして「カリカリ梅」の名称で出回っている。
画像出典:https://iiif.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/repo/s/agriculture/document/5bfde8bf-0b54-7848-97d6-1ee30cf9a645#?c=0&m=0&s=0&cv=25&xywh=-810%2C-1%2C6863%2C4094 「有用植物図説」より抜粋 明治時代の植物図鑑に収録されている品種で、「果実が熟さず、冬まで枝に緑色の果実が実ったままであるので、常梅の名称がある」(筆者現代語訳)と原著にある。どうやら、古くは冬まで緑色のまま干からびた果実を食用にしていたらしい。現在は、果実が落ちないことを「受験に『落ちない』」にかけたゲン担ぎとして、道明寺天満宮など、各地の神社に植えられている。
画像出典:牧野記念庭園にて筆者撮影 ウメの園芸品種。顎が緑色をしているのが特徴であるから「アオジク」とも呼ばれることがある。樹高や開花時期は普通種と同じ。花色は純白。江戸時代から、梅の品種の中で最も品位のある種類として持て囃されてきた。普通一重咲きだが、八重咲きのものもある。 果実は食用にすることができ、梅干しや梅酒にする。
画像出典:小石川植物園にて筆者撮影 ウメの園芸品種。花弁は薄い黄色であるが、開く前のつぼみはより黄色が濃い。展開した花弁が細くなるのが特徴である。
1、梅の果実をよく洗ったあと、陰干しにして軽く乾かす。 2、水分が飛んだところを見計らい、塩漬けにする。 3、梅の水分が上がってきたところで、2日から3日の間日干しして水分を完全に抜く。この段階で終了させたものは「白梅干し」とよばれる。 4、水分が抜けた梅の実を干した赤紫蘇の葉と共に重しをして、元の漬け込み液(梅酢)に再び漬ける。 5、赤紫蘇の色が梅の実に移ったころを見計らって容器から取り出して日干しにし、好みの柔らかさになるまで水分を抜く。 6.甕や煮沸消毒した瓶に梅干しを詰め、冷暗所で保存する。
この手順で、今年の初夏はぜひ自家製梅干しを作ってみよう。食べきれない場合は、煮沸消毒した瓶に詰め、連蔵湖や冷暗所などに保存すればよい。