バナナ(甘蕉)は、有用植物の一種である。 (上)東京都薬用植物園にて筆者撮影。品種は「三尺バナナ」 。果実は熟すと風味がよくなるので、果物として生食される。草丈は1mほどにしかならない矮性の品種。(下)夢の島熱帯植物館で撮影。 調理用バナナ、いわゆる「プランテイン」の小さな果実と花。
世界各地の熱帯もしくは亜熱帯地域で栽培される多年草植物。なぜ多年草とわざわざ強調したかというと、一見すると木のように見えるが、内部が木質化することはなく、木の幹のような部分は、葉が重なってできたものであるからである。この木の幹のような部分を植物学用語では「偽茎」と呼ぶ。よって「バナナの木」という表現は正しくない。 マレーヤマバショウ(M.acuminata)を栽培し始めたもので、原種には種子が多く含まれるが、突然変異を起こして3倍体の種無しになり、リュウキュウバショウ(Musa balbisiana)などの多種と交雑されて現在のような果実になった。このため、花を咲かせ、実を実らせるとその株は枯れてしまうが、根本から出た子株が成長を続ける。いわゆるクローンである。ただ、この性質により『キャベンディッシュ』という品種は、親株の病気が子株に遺伝することがあり、絶滅の危機に瀕している。 ちなみに、バナナの果実を横に切ると黒い点のようなものが見えるが、それは種子の名残である。 普通我が国では長さ14cmほどの黄色い果実を生食するが、沖縄県に在来の「島バナナ」の通称で知られる品種はその半分ほどの長さしかない。 中南米やアフリカでは熟しても黄色くならず、硬いままの品種がある。生食しようとすると、歯が折れそうになるほどの硬さであるという。これは調理用バナナ、いわゆる『プランテイン』と呼ばれるもので、現地では主食の扱いである。甘みはなく、加熱すると芋に似た味わいであるという。 現在、全世界のバナナの生産量の7割は中南米に占められる。カロリーが高く、アスリートには人気の果物である。