ウンシュウミカンは、わが国で作出された果樹の一種。 画像出典: 東京都薬用植物園にて筆者撮影
我が国で作出された果樹の一種で、江戸時代に作出された。現在単に「ミカン」と呼ばれるのはほとんどが本種である。DNAの解析結果から、クネンボとキシュウミカンを交配し、突然変異を起こしてタネ無しになったものであると判明している。種子がないという性質がお家断絶を想起させることから嫌われ、一般に広く栽培され、食用とされるようになったのは、武士階級の消滅した明治時代になってからのことである。 和名は、甘みの強い柑橘類の名産地で知られている中国浙江省の温州という地域にあやかって名付けられたが、温州が原産というわけではない。 江戸時代中期の百科事典『和漢三才図会』には「温州橘」と呼ばれる柑橘類の記述があるものの、情報が少ないので本種かどうかは現在のところ、よくわかっていないという。 5月に直径3㎝ほどの白い星型の花を咲かせる。一般的に花粉は少ないが単為結果性*1のため受粉がなくても結実する。果実は9月から12月にかけて熟する。 果皮が薄く、手で向いて食べることができる。果肉を生食、あるいはジュースやフルーツサラダのアクセントにするほか、果皮を乾燥させて漢方薬の陳皮とするほか、砕いて七味唐辛子に混ぜる。また、摘果した若い果実は、橙やユズのように果汁を焼き魚の風味づけに用いる。