ニンジンは、根を食用とするために栽培する作物の一種である。 画像出典:自宅近くの農産物直売所にて筆者撮影
中央アジアが原産で、我が国には桃山時代に導入されている。現在は野菜として広く栽培されるほか、栽培種が逸出して野生化した逸脱種であるノラニンジンが各地の路傍に生息する。このノラニンジンは昭和初期に牧野富太郎によって発見され、現在では日本全土で見られ、特に北海道では普通に見られる。草丈は1m程度で、葉は羽状複葉で、長い葉柄があり、切れ込む。花は複散形花序で、白色で遠目からみると唐笠のように見える。この特徴はセリ科のほとんどに当てはまり、セリ科を古くはカラカサバナ科と呼んでいたのはこれに由来する。 根茎は現在栽培されているものは長さ15cm内外であることが多い。金時人参などの東洋系品種は普通30cm以上である。現在は根が橙黄色の西洋系品種が盛んに栽培され、東洋系品種は、収穫に手間がかかり病害虫にもあまり強くないことから、需要が激減している。変わり種としては黄色や白色(クリーム色)、黒紫色のものがある。わが国の在来種にも黄色いものがあり、沖縄県で栽培される『黄大根(チデークニ)』という名前のかなり細長く黄色い根を持つ品種である。 根を煮物や炒め物、サラダや汁の実にする。精進揚げにも向く。間引いた苗や葉も青菜として食用になる。
画像出典:自宅近くの農産物直売所にて筆者撮影 西日本、すなわち関西から九州までの地域で生産され、とくに大阪府の木津川地域で多く栽培される品種。根の長さは30㎝内外と細長く、色は深紅である。肉質は柔らかく、甘みを持つ。関東ではまれに自家用で栽培されるか、晩秋~年末年始に百貨店に出回る程度である。 わが国で古くから栽培されてきた「東洋種」で、『本草図譜』や『有用植物図説』には根の赤い東洋種のニンジンが描かれている。
明治ごろに欧米から導入された品種で、現在の主流となっている種である。根の色は鮮やかな黄色みの橙色で、根が9㎝くらいで肩が張り幅4㎝内外で先のとがらない円錐形になるものと、根が15㎝くらいで肩が張り先端がとがるものがある。
画像出典:池袋の百貨店にて筆者撮影 ニンジンの中でも根全体が黄色で、表皮のみならず内部も黄色いのが特徴である。オレンジ色の普通種に比べて甘みが強く、「カロテン臭」という特有のにおいがほとんどない。画像の品種は「金美ニンジン」という品種で、東洋系ニンジンの系統である。沖縄県には東洋系ニンジンである「地大根(チデ―クニ)」という細長い品種があり、こちらも東洋系の品種である。
画像出典:所沢市の商業施設にて筆者撮影 ダイコンをミニチュアにしたような見た目だが、風味はれっきとしたニンジンである。こちらも東洋系の品種で、江戸時代中期の百科事典『和漢三才図会』には「(東洋系の)人参の根の色は赤、紫、黄、白」と紹介されているが、赤色の金時ニンジンや沖縄の「チデ―クニ」以外の城や紫色の在来種は残っていないという。現在栽培される白や紫のニンジンは中東で栽培されているものがわが国に導入されたと推測される。癖のない風味で、煮物はもちろん、サラダやバーニャカウダなど生食にも向く。
画像出典:川越市の商業施設にて筆者撮影 こちらもまた東洋系の品種で、中東で栽培されていたものが珍野菜ブームに乗じてわが国に紹介され、家庭菜園で栽培されるようになったものと思われる。表皮はインパクトすら感じさせる紫色で、内部の色は品種によって異なるが、紫一色であったり、オレンジ色であったり、白っぽかったりする。アントシアニンが含まれているため、生活習慣病の予防や視覚機能の改善に効果があるという。加熱調理では色が抜けてしまうので、サラダや酢漬けにする。