トウガラシは、香辛料並びに野菜の一種。 画像出典:ウィキメディア・コモンズ
熱帯アメリカを原産地とし、コロンブスによる新大陸発見を境に全世界に広まった香辛料の原料である。現在はカレー、麻婆豆腐、キムチなど世界中で辛い料理の材料として欠かせないものになっている。 我が国には室町時代に南蛮貿易が開始された際に持ち込まれ、現在韓国料理でトウガラシが使われているのは、豊臣秀吉による朝鮮出兵の際に、日本軍の兵士が食料として持ち込んでいたトウガラシの利用が広まったことによる。 辛味はスコヴィル(SHU)という単位を用いて表される。以下の表は、トウガラシの品種ごとのスコヴィル値をまとめたものである。近年は品種改良が進み、かつて「世界一辛い唐辛子」の称号を頂戴していたハバネロやジョロキアが裸足で逃げ出すほどの辛みを持つ品種が次々登場している。茎を持って食べ物にすり付けるのが関の山で、それ以上は危険が伴う。こういった激辛のトウガラシは最悪の場合、目を覚ますとそこは西方浄土遥かなりとなってしまうことがある*1ので、度胸試しもほどほどに。
画像出典:東京薬科大学薬用植物園にて筆者撮影。かつてハバネロは「世界一辛いトウガラシ」の称号を持っていた。スナック菓子「暴君ハバネロ」*3で一気に知名度を上げた品種である。独特の形状を活かして、現在は観賞用としても流通している。 画像出典:東京薬科大学薬用植物園にて筆者撮影。ハバネロの記録を塗り替え、スナック菓子「大魔王ジョロキア」*4でその名を知らしめた激辛トウガラシのブート・ジョロキア。
トウガラシの近縁種の中には香辛料として利用する他、辛味がないため野菜として食べるものや、見た目が美しいため、観賞用にするものもある。 以下に、トウガラシの近縁種を数点紹介する。なお、ピーマン、シシトウガラシについての詳細は独立項目に譲ることとした。
画像出典:東京薬科大学薬用植物園にて筆者撮影 果実は細長く長さ10~20cmになり、垂れ下がって実る。辛味の程度も色々あり、日光トウガラシ、伏見トウガラシ、ハオリノヒモ、見廻しトウガラシなど多くの栽培品種を含む。
画像出典:東京薬科大学薬用植物園にて筆者撮影 調味用,乾果用のトウガラシで辛味が強い。果実は長さ6~7cm。鮮紅色で上向き,房状に着果する。東京都内藤区で江戸時代から栽培されていた歴史ある品種で、果実の実る様子からテンジクマモリもしくはテンジョウマモリとも呼ばれる。
画像出典:福岡市植物園にて筆者撮影。「コニカルオレンジ」と「コニカルレッド」という品種が混植されている。 観賞用のトウガラシで、背丈は食用のトウガラシより小さく、鉢植えにしたものが夏から秋にフラワーショップやホームセンターなどで出回る。 果実の大きさや色、形も千差万別で、赤色や紫色、オレンジ色や黄色、白色の果実が混合されている品種が最も多く栽培される。 近年は「ブラックパール」という、果実だけでなく葉も黒っぽい品種が人気。 東南アジアでは香辛料としての利用が多く、まさに「ゴシキトウガラシは小粒でもビリリと辛い」のである。
画像出典:東京薬科大学薬用植物園にて筆者撮影 メキシコの品種で、辛さは中程度。ピーマンのように肉厚な未熟果の種子を抜いて食材を詰め、油で揚げるフリッターがアメリカでは好まれる。また、辛みを生かして刻んだものをサルサソースに混ぜる。