カリンは、果樹の一種である。
画像出典:(左)小石川植物園にて撮影。(右)福岡市植物園にて筆者撮影 科名:バラ科カリン属 学名:Chaenomeles sinensis(Thouin) Koehne 原産地:中国 生態:落葉高木 庭などに栽植される中国原産の落葉高木である。樹高は5m~10m。樹皮は緑がかった褐色で、うろこ状にはがれて跡が残る。若い枝や若葉にはやわらかい毛が生えるが、長ずるにしたがって抜けていく。春に薄桃色の花を咲かせる。果実は梨果で、表面に毛はなく、枕型で寸胴である。熟した果実の表面はややべたつく。長さは10㎝~15㎝、芳香があるが生では硬くて渋いため、輪切りにして砂糖漬けやのど飴、薬用とする。材は高級家具などに用いる。未熟果にはアミグダリンが含まれるため、必ず熟したものを用いる。和名は花櫚(かりん)(フタバガキ科の工芸用樹木で、「インドシタン」とも呼ぶ。わが国には加工された材が高値で取引され、経済的栽培はほとんどなく、まれに植物園温室で栽培されるのみ)に材質がよく似ているため。わが国には江戸時代初期(1634年)に渡来している。 しばしばマルメロと混同されるが、マルメロは球形である。とはいえ、カリンも球形に近くなることがあるため、マルメロとは果実表面のモモのような産毛の有無で区別する。 宮沢賢治の児童文学「風の又三郎」の冒頭部分「青いくるみもふきとばせ すつぱいくゎりんもふきとばせ」(原文ママ)に登場することでも知られる。また、マルメロは「西洋かりん」と呼ばれるが、これを正式な和名としているメドラ―という植物があるため、まれに混同される。 種子や未熟な果実には「アミグダリン」という有毒成分が含まれるので、よく熟したものを利用し、果実酒などにする際は適当な大きさに切って種子を除いてからにする方がよい。