オクラは、野菜の一種である。
画像出典:いずれも筆者撮影(東京都薬用植物園)
インドが原産とされる一年草草本で、わが国には幕末に渡来している。幕臣・貴志忠美(1800~57)が駿府で編纂した植物図譜『本草写生』に『魯西亜豆(オロシヤマメ)』という名称で登場するのが最古の記録である。草丈は0.5~2mで、茎は直立する。葉は互生し、葉の長さは15~30㎝、掌状に5つの切れ込みがある。 花は両性花で、葉腋に一つずつ咲く。5枚の花弁は薄黄色で中心は赤茶色に染まる。果実は蒴果で、長さは10㎝~20㎝で、先端がとがり、切り口はたいてい五角形である。刻むと粘りが出る。八丈島の在来品種は蒴果が円柱形で、イスラエルの品種である「ダビデの星」(スター・オブ・デイビッド)は稜の多い星型もしくは歯車型である。 画像出典:オクラ「スター・オブ・デイビッド」。夢の島熱帯植物館にて筆者撮影。普通種と違い、果実は硬くなりにくいので少々収穫が遅れても問題ない。 若い果実をサラダで生食するほか、炒め物や揚げ物、ソウメンの薬味やケイジャン料理のガンボ(野菜スープ)に調理して食用とする。野菜としての旬は初夏から盛秋である。 園芸品種に蒴果が赤紫色になるものがあり、こちらも普通若いものを野菜として食用にするが、やや成長させて花材とすることもある。また、「カウホーンオクラ」と呼ばれる品種もある。これは、果実が牛(カウ)の角(ホーン)のように若干反り返り、しかも大型になる品種である。この品種は熟して硬くなるのが遅いため、少々取り遅れてもおいしく食べることができる。 画像出典:(上)埼玉県所沢市にて筆者撮影。「ベニー」という、蒴果が赤紫色になる珍しい品種。/(下)「カウホーンオクラ」。東京薬科大学薬用植物園にて筆者撮影。