随筆草木志/植物と心中する男 のバックアップ(No.1)



  私は植物の愛人としてこの世に生まれきたように感じます。あるいは草木の精かも知れんと自分で自分を疑います。ハ﹅﹅﹅﹅。私は飯よりも女よりも好きなのは植物ですが、しかしそのすきになった動機というものはじつのところそこに何もありません。つまり生まれながらに植物好きであったのです。どうも不思議なことには、酒屋であった私の父も祖父も祖母も、また私の親族のうちにだれひとり特に草木の嗜好者はありませんでした。私は幼い時からただなんとなしに草木が好きであったのです。私の町(土佐佐川町)の寺子屋、そして間もなく私の町の名教館という学校、それに次いで私の町の種学校へ通う時分よく町の上野山などへ行って植物に親しんだものです。すなわち植物に対してただ他愛もなく、趣味がありました。私は明治七年に入学した小学校が嫌になって半途で退学しました後は、学校という学校へは入学せずにいろいろの学問を独学自修しまして多くの年所を費やしましたが、その間一貫して学んだ、というよりは遊んだのは植物の学でした。

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