チャンチン(香椿)とは、樹木の一種である。
画像出典:左右いずれも新宿御苑にて筆者撮影 科名:センダン科チャンチン属 学名:Toona sinensis 原産地:中国 生態:落葉高木 中国の中・南部からインドシナ半島、ヒマラヤ周辺からインドに分布する落葉高木である。わが国へはすでに江戸時代には渡来していたようで、『本草図譜』に彩色図がみられる。 樹皮は暗褐色で、樹高は9~12mとなる。高いものでは30mに達することもあり、そのすらっとした樹形と樹高から、古くは「クモヤブリ(雲破り)」という名称で呼ばれた。葉は奇数羽状複葉で互生し、小葉は先端の尖る卵形または先端の尖る長楕円形となる。展開したばかりの葉は、薄い赤褐色またはくすんだ桃色である。成長した葉は鮮やかな黄緑色となり、6月から7月にかけて、枝先の円錐花序に白い花を咲かせる。花の後には蒴果を結び、秋に熟すと裂けて種子を散布する。 本種の若い芽は食用となり、古くから野菜の一種として原産地では親しまれてきた。花や若い葉が香りを放つことと、伝説上の長寿の木、すなわち仙樹の「椿(チン)」*1をイメージしたことから、「香椿」の字があてられる。香りとはいっても、いわゆる香水のそれではなく、タマネギやニンニクなどの香味野菜のような香りがあるという。このため、中国の道教や仏教の寺院では教義により口にすることがタブーとされる五葷(ごくん)*2の代わりに精進料理の味付けに用いた。材は堅く、同じセンダン科で高級材をとるマホガニーに似ていることと、中国原産であることから、「チャイニーズマホガニー」という名称で家具や器具用材などに用いる。