カントウタンポポとは、雑草の一種である。古くは「たんぽぽ」といえば本種を指した。 [添付] 画像出典:小石川植物園にて筆者撮影 科名:キク科タンポポ属 学名:Taraxacum platycarpum 原産地:関東地方、中部地方東部 生態:多年草 我が国の草地や葉竹の炭などに生息する「雑草」の一種である。 春に多数の根生葉が出て、放射状に伸び、ロゼットを形成する。ロゼットの中心から花茎が伸び、その先端に一個の鮮やかな黄色の頭花をつける。 根生葉 花茎の周囲には白色の細くやわらかい毛が散生する。花を支える総苞は内側に1列、外側に数列に並ぶ。 花茎は、1株につき根から1本ないしは数本出る。中空で、折ると乳状の白い液体が出る。これは空気に触れるとべたべたになり、若干のゴム状となるが、これは植物体が傷つけられた際にそこから雑菌が入るのを防ぐためのものである。 頭花は、日が照ると開き、日が沈むと閉じる「一日花」で、花の後には冠毛(綿毛)を伴う果実をつける。この部分は種子のように見えるが、植物学上は「痩果」と呼ばれるものである。「痩果」をつける植物はほかに、同科のヒマワリやバラ科のオランダイチゴ、ヒユ科のフダンソウが知られる。 現在都会でみられるのはほとんどがセイヨウタンポポである。本種とセイヨウタンポポは一見すると変わらないように見えるが、前者の総苞編が反り返らないのに対し、後者は大きく反り返るのが特徴である。とはいえ、両者は交雑しやすく、厳密な見分けは難しいようである。また、前者が他の株との受粉によってしか種子を作れないのに比べ、後者は自分の花粉で受粉する「自家受粉」により種子を作ることができるという点も異なる。セイヨウタンポポの場合、この特性により繁殖してきたといえよう。 この現状はしばしば「外来種が在来種を圧迫した」と説明されるが、実態はそうではない。別にセイヨウタンポポが在来植物を枯らすような力、いわゆるアレロパシー的成分を持っているわけではない。その証拠に、同じ鉢で両者を栽培する実験が行われているのだが、両者いずれも枯れずに育っているという結果が出ているのである。実際のところ、セイヨウタンポポが蔓延したのは、人による土地の攪乱のせいである。